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2008-01-15 00:00
そろそろ国としてじっくり考えてみるとき
湯下博之
杏林大学客員教授
雑誌『文藝春秋』の2007年12月号に掲載された藤原正彦お茶の水女子大学教授の「教養立国ニッポン」と題した論文を読んで、いろいろ考えた。教授は、「グローバル化」により「我が国の至宝ともいうべき国柄が片端から壊され、日本は今、ごく凡庸な国へと坂道を転げ下りている」とし、米国による「巧妙なマインド・コントロールに操られていたとは言え」、「日本人自身に大きな問題が潜んでいた」と述べて、「経済至上主義」と「日本人が祖国に対する誇りを失っていたこと」を挙げておられる。そして「戦後日本の主軸として働いてきた『経済至上主義』を弱め、日本人としての誇りと自信を取り戻し、傷つけられた国柄を少しでも取り戻す方策」として「教養主義」の復活を唱え、「日本人の失った誇りと自信はどうしたら回復できるか。日本の産んだ世界に誇る文化遺産に触れることが何よりと思う」と述べておられる。
教授の論文については、部分的にはコメントしたい点もないではないが、日本が自信や誇りを取り戻す必要があるのは、そのとおりであると思う。もっとも、このことは、国全体についての問題であるのみならず、多くの個々の日本人についても、しばらく前から問題となっている。経済的には以前より豊かになっているにもかかわらず、「心の問題」が生じて、決して幸福ではない、などというのもその一例である。昔は、「狭いながらも楽しい我が家」といった生活であったが、今は心の安らぎがないといったこともそうである。
個人の場合について、この問題を解決する上で大切な要素としては、暖かい人間関係や自分をしっかり持つこと等があると思う。そして、自分をしっかり持つためには、自信とか信念、目標、心の寄りどころ、といったものを持つことが大切であると思う。更に、そういうものを持つためには、常日頃の心掛けや努力が必要となろう。現在の日本という国について見ると、藤原教授が指摘されるように自信や誇りが失われているのみならず、かつて有していた美徳も薄れ、更には、進むべき方向性(目標)すら失われて、腰が定まらずに右往左往していると言わざるを得ない。しかも、経済面では、世界第二の経済大国になっているのに、である。
一体、どうしてこんなことになってしまったのであろうか。米国の工作によるためであろうか。国際関係では、米国のみならず、どこの国でも自国の利益を図るために他の国々に働きかけるのであって、そのような働きかけを受けて国が駄目になるようでは、その国は国家として失格である。諸外国からの種々の働きかけを受けながらも、自分をしっかり持って、国としての利益を図るのが当然の道である。
私見では、上記の日本の問題は、第二次世界大戦の敗戦に伴う価値観の崩壊に起因していると思う。日本は神の国であるから負けることはない、と教え込まれていたのに負けた。そのショックは大きく、それ迄の価値に疑問が持たれるようになった。敗戦後の混乱期には、生きるためには何でもすることが必要であった。経済の発展と生活の向上は、国民共通の目標となり得たが、伝統的な美徳や精神面の豊かさの復活はそうならなかった。そして、経済がおかしくなると、自信も誇りも離れて行った。そろそろこの辺りで立ち止まって、日本が持っていた優れた面を復活させ、自信と誇りを取り戻すことを、じっくり考えてみる時であると思う。
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