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2007-12-07 00:00
パブリック・ディプロマシー不在だった日米首脳会談
伊奈久喜
新聞記者
12月2日の朝刊各紙で報道された外交に関する世論調査の結果は、近年になく興味深い。中国や韓国との関係が改善したと感じるひとが増え、日米関係については「良好だと思う」が76.3%。極めて高い数字だが、前年より6.4ポイント減った。逆に「良好だとは思わない」は8.8ポイント増え、20.4%。質問を始めた1998年以降、最高の数字となったという。
福田内閣に対米追随脱却・アジア重視外交を期待したひとたちには喜ぶべき結果ではないのか。が、この結果を歓迎する声はメディアの世界ではほとんど聞こえない。多くは日米関係悪化を心配する。福田内閣は残念ながら、心配解消に有効な手を打てずにいる。11月のワシントンでの日米首脳会談は、そのチャンスだったが、小泉・ブッシュ関係は言うに及ばず、安倍・ブッシュ関係よりも冷えた関係を思わせた。
11月18日付けの日本経済新聞社説は「共同記者会見を避けた日米関係の秋」を見出しにとった。それによれば「米大統領と会談した外国首脳が並んで記者団の質問に答えるのは、日常的な光景だが、日米間に限れば、例外はあるが、一九九一年七月のケネバンクポートでの海部・ブッシュ会談の際の共同記者会見をきっかけに慣例になってきた」といわれ、共同記者会見をしなかった日米首脳会談は、実に17年ぶりとなる。
対世論外交とでも訳すのだろうか、パブリック・ディプロマシーの重要性を説く論者が外交当局者には多い。在米日本大使館で広報を担当する北野公使もそのひとりであり、これに関する共著もある。今回の日米首脳会談で共同会見をしなかったのは米側の要請と日本側は説明する。それを信じるとすれば、パブリック・ディプロマシーを説く外交当局者たちは何でそれを受け入れたのだろうか。理解に苦しむ。おそらくは抵抗したのだろうと考えたい。
首脳外交は普通、直後の世論調査の内閣支持率を一定程度押し上げる。しかし今回、首脳会談効果は、ほとんどなかった。当然である。パブリック・ディプロマシーがなかったからだ。同床異夢を押し隠そうとし共同会見を避けたのだとすれば、それがかえって同床異夢をさらけ出す皮肉な結果になった。なお外務省当局には、福田、ブッシュ両首脳がそろって記者団の前に現れ、声明を読んだことをもって共同記者会見がなされたと説明する向きもあるようだが、メディア側の記者会見の定義に従えば、質問し、それに答える時間がないような一方的な場は記者会見ではない。それは記者発表と呼ぶ。
しかし、深刻なのはパブリック・ディプロマシー不在ではない。日米関係のよそよそしさである。日米中の三角形には日米、日中、米中の3辺がある。瞬間風速でいえば、いま最も良好なのは日中であり、米中、日米は問題含みである。福田首相が外交ブレーンを集めた懇談会をつくるという。現状に問題ありと感じているのであれば、それは結構なことだと思う。
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