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2007-11-16 00:00
世界、とくにカナダに学ぶべき、日本の平和論
田島高志
東洋英和女学院大学大学院客員教授
先月日本カナダ学会年次大会でカナダ政府の安全保障政策に関する研究発表があった。先ずカナダ大使館参事官より、国連平和維持活動(PKO)の課題について「PKOはスエズ危機の際カナダの提案により創出されたものであるが、冷戦終結後は紛争の多くが内戦の形に変化したため、市民の生命や人権の保護に変化している」との説明があった。現在世界で25以上の多国籍平和維持活動が展開されているが、それには国連に加えアフガンでのNATO、コンゴでのEU、ダルフールでのAUのように、地域機関も関与しており、それらの活動では軍、警察、外交官、援助専門家、人権専門家などの協力を相互に調整することが重要な課題となっており、その調整のためカナダの提案で国連に平和構築委員会が設置されたことがと解説された。「これまでカナダはアフガンに2万名以上の兵を、また世界各地の平和構築活動に2,100名以上の警察官を派遣しているが、もし世界的に有名な日本の警察が平和構築に派遣されれば大きな貢献になろう」との示唆があり、「カナダ国民はこうした平和活動への参加を先進大国の当然の責務として支持している」と結んだ。
次に青山学院大学の青井准教授より、人道的介入問題に関し、カナダの提案で国連に設立された「介入と主権に関する国際委員会(ICISS)」が「保護する責任(Responsibility to Protect)」の概念を提起し、それが2005年の国連総会で採択された経緯の説明があった。主権国家がジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に関する罪から市民を「保護する責任」を果さない場合に、国連安保理が自らの責任として保護のために行動する用意があるとする概念であると解説された。これは「責任」概念の新たな導入であり、国連の威信を回復するという意味を持つが、果して主権と人権の対立関係を解消できるか、国連の威信をどこまで回復できるか、問題は残ると指摘された。カナダは貧困よりも抑圧からの自由に留意し、ICISS報告は主権を「支配」ではなく「責任」と捉えて「保護する責任」の概念を提示し、介入正当化の理論的試みを行ったものであり、人道・人権問題への関心が主権規範に影響を与え、国連の介入が正当化されつつあるとの分析を提示した。今後は介入の制度化や国連の行動がない場合の一方的介入の許容などの問題について、創造的、建設的な議論が必要になると結んだ。
ここに示されるように現在世界の議論は安全保障問題を巡り急速に動いており、日本ではテロ特措法のように直接の戦闘行為を含まない貢献活動、しかもシーレーンを守るというわが国の直接の国益にも繋がる活動に対してさえ強い反対のある現状は、何とも世界的視野に欠ける情けないことと慨嘆せざるを得ない。
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