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2007-11-10 00:00
守屋問題の罪深さ
伊奈久喜
新聞記者
守屋武昌前防衛次官の所業はあきれるばかりだが、あのような人物に責任あるポストを与え、仕事をさせた「戦犯」はだれか。それはひとりではないが、防衛省を眺めてきた記者の目からみれば、最初に上がるのは、福田政権の某有力閣僚だろう。この政治家は、守屋氏の官僚人生のなかで重要な意味のある人事にかかわったし、次官としての長期在任にも責任ある立場でかかわった。
守屋氏は国会での証人喚問で、山田洋行元専務との宴席に防衛庁長官経験者がいたと暴露した。氏名の明示を避ける高級な政治的戦術であり、数人の防衛庁長官経験者がコメントを求められた。そのなかにひとり、「記憶がない」と答えたひとがいる。「事実がない」ではなく「記憶がない」である。いずれ記憶がよみがえるような証拠をつきつけられても、この表現なら、うそをついたことにはならない。
プレスにも責任の一端があると自己批判せざるを得ない。週末の守屋氏の行動を知らなかった点を責められても困るが、ニュースソースになってくれる人物に対する批判が鈍るのは、メディアの「さが」であり、守屋氏についても、それはあてはまった。守屋氏は、あの組織のなかで独裁的な権力者だったから、確かな情報に基づく責任のある発言ができる、たったひとりの人物だった。批判すれば取材が難しくなると第一線の記者たちが考えても無理はない。
守屋氏の次官在任が三年目か、四年目に入った時だったか、覚えていないが、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし、ですよ。これから先は大変なことばかりで、いいことはないから…」と言ったことがある。「そうなんだよな」が答えだった。本心だったのだろう。が、同時に、ほかに次官のできる人間がいない、との思い違いがあったのだろう。
守屋氏の一件は、日本の対外的なイメージの低下にもつながったし、防衛省・自衛隊の士気にもかかわるから安全保障上のダメージにもなった。本欄で守屋問題を取り上げたのはこのためである。新テロ特措法案の審議とのかかわりはいうまでもなく、守屋問題は外交・安全保障問題なのである。それにしても守屋氏を重用した政治家たちから自己批判がないのは奇妙である。記憶喪失であれば、やむを得ないのかもしれないが…。
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