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2025-03-06 00:00
ディープシークの衝撃・・新たな米中対立、取り残される日本
舛添 要一
国際政治学者
中国の新興企業デイープシーク(DeepSeek)が開発した生成AI(人工知能)が、世界を激震させている。高性能な上に低コストだからだ。開発成功の背景、そして今後の世界への影響を考える。ディープシークの創業者は梁文鋒(Liang wen feng リャンウェンフォン)で、1985年に広東省の湛江市で生まれた。幼少時より成績優秀で、高考(ガオカオ、大学統一入試)ではトップで、浙江大学に入学した。大学では電子情報工程に進み、大学院修士課程は情報・通信工程に進学した。修士号取得後、2015年に、「幻方量化(High Flyer Quant)」というヘッジファンドを設立し、AIを活用して株取引で大きな利益を上げた。その後、2023年7月に浙江省の杭州市に「杭州深度求策人工知能基礎技術研究(深度求策)」、ディープシークを設立した。
この新興企業の研究者の大半が中国一流大学の卒業生で、社員は140人である。アメリカ留学組を排除する方針で、技術の国産化を図っている。驚くべきなのは、ディープシークのV3が開発にわずか2ヶ月、約560万ドル(約8億7千万円)しかかかっていないことである。開発費については、アメリカのオープンAIのGPT4は約7800万ドル(約120億円)、グーグルのジェミニ・ウルトラは約1億9100万ドル(約300億円)である。まさに10分の1以下の開発費である。この低コストが実現できたのは、既存のAIモデルが出力するデータを使って新たな生成AIを作るからである。この手法を「蒸留」と呼ぶが、ディープシークは、オープンソースとして公開されているAIモデルを利用したという。アメリカの対中規制によって、生成AIの開発に必要なエヌビディアの最新半導体入手できない状況になったため、新しい発想が生まれたのである。「災い転じて福となす」ということである。
かつて、アメリカは、華為(ファーウェイ)の製品を閉め出した。そのため、華為には大きな打撃となった。しかし、その後は、研究開発に力を注ぎ、見事に復権している。昨年の春に華為を視察したが、世界最高水準のスマホの開発に成功し、自動車産業にも進出する勢いだった。これもまた、アメリカの規制が生んだ副産物である。昨年は2度にわたって中国を訪問したが、先端技術分野での目覚ましい発展に驚かされた。中国を支配しているのは中国共産党であるが、「万人が平等な」社会が実現しているわけではない。厳しい競争社会である。先に、大学の受験地獄について記したが、随の時代から清の時代まで科挙が続いてきた国である。何段階もの地獄のような試験を合格しなければ、社会の指導者にはなれない。
科挙では60歳という高齢で合格する者など、人生を受験に捧げたようなものである。今の中国も状況は似ており、幼少期から高考めざして、受験勉強に励む。したがって、ディープシークで働くような天才的人材が輩出されるのである。EVやドローンの開発にしても、数多くのメーカーが競争している。負ければ、撤退せざるをえない。中国メーカーの攻勢に対抗するために、ホンダと日産が経営統合する日本とは大違いである。中国が熾烈な競争社会であることを認識しないと、日本は取り残されていくばかりである。
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