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2024-11-18 00:00
アメリカの「政府効率化省」と日本国のデジタル庁
倉西 雅子
政治学者
今般のトランプ次期大統領によるイーロン・マスク氏の起用は、様々な波紋と影響を与えているようです。従来の論考報償のスタイル、即ち既存の重要ポストの提供ではなく、マスク氏の要望に応える形で「政府効率化省」を新設した上での登用なのですから、アメリカの統治制度にまで踏み込む改革を、大統領への就任以前の段階で凡そ実現させてしまったことになります。来年1月に予定される第二次トランプ政権の正式発足後において立法措置を要するのでしょうが、上下両院とも共和党が多数派となりましたので(大統領を合わせて‘トリプルレッド’・・・)、新組織の設立については議論らしい議論もなく法案が成立し、マスク氏・ラマスワミ氏両氏のトップ就任の人事もすんなりと承認されるかも知れません。その一方で、予算に関する主たる権限は議会にありますので、今般の「政府効率化省」の設置は、アメリカ全土に激震が走っても不思議ではないほどの大改革、否、改変ともなり得ましょう。‘効率化’を口実とすれば、官僚機構に関する行政経費のみならず、あらゆる政策領域の予算に口を挟むことができるからです。
「政府効率化省」のように、統治組織やシステム全般を対象として設立された機関には、あらゆる政策分野の垣根を越えて縦横に自らの管轄範囲に含めることが出来る包括性があります。このため、極めて強いパワーを発揮する可能性を秘めていると言えましょう。この点に注目しますと、日本国のデジタル庁にも同様の特徴を見出すことができます。何故ならば、同機関も、‘デジタル化’を口実とすれば、あらゆる省庁のあらゆる政策分野に介入することができるからです。同庁のホームページを見ますと、同庁の概要は、「デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げることを目指します。」とあります。同文章には、‘デジタル社会形成の司令塔’という表現が見られるのですが、仮に、日本国のデジタル社会への転換が急がれている、否、急がされているとしますと、デジタル庁は、まさにこの革命的な社会改革を上から‘指導’する‘司令塔’の地位に躍り出たことにもなります。しかも‘一気呵成’というのですから、脇目も振らないようなスピード感、否、暴走感にも溢れた説明文なのです。
同方針は、デジタル大臣の言動にも顕れています。例えば、河野前デジタル大臣は、デジタル庁からの勧告はあたかも‘命令’であるかのような説明をしていましたし、実業家の堀江貴文氏が空港での健康カードの使用についてSNSに苦情を投稿した際には、迅速に調査を命じたとも報じられていました。これらの事例は、社会改革の指導者としてのデジタル庁の傲慢とも言える意気込みを示しているのですが、各省庁の予算を見ますと、多方面に亘る‘デジタル予算’なるものが、急速に増額する傾向にあることを認めざるを得ないのです。そして、デジタル庁の設立過程を見ましても、アメリカの「政府効率化省」と類似する唐突感があります。同庁のホームページには設立に至る経緯に関する説明は記載されていないのですが、2020年9月に発足した管政権の下で設立に向けた動きが始まり、立法手続きを経て翌2021年9月には設置されています。同作業にあって「Government as a Startup」というロゴが使用されたところからしますと、当時の管義偉首相、あるいは、自公政権の発想とも思えず、デジタル庁の設置には、グローバルレベルでデジタル化を推進している海外勢力、すなわち、世界権力からの要請があったものと推測されるのです(全世界で災害が頻発している現状からしますと、「防災庁」の設置も外圧かもしれない・・・)。
マスク氏は、自らに寄せられる疑問に対して「われわれが何か重要なものを削減している、あるいは無駄なものを削減していないと国民が感じた場合は、ぜひ知らせてほしい。・・・」と投稿したとされます。しかしながら、この台詞、河野前デジタル大臣からも聞いたような気がします。デジタル庁のホームページにも「あなたの声を聴かせてください。」とあるのですが、スピード、すなわち、一方的な既成事実化を得意とする人々が、この言葉通りに一般の国民の声に真摯に耳を傾けるとは思えないのです。落ち着いて考えてもみますと、一体、誰が、人類の未来をデジタル社会の一択に決めてしまったのでしょうか。未来ヴィジョンを一つに決めつける必要はなく、グローバリストによる監視・管理社会となりかねないデジタル社会よりも、より人類に相応しい未来もあり得るのではないかと思うのです。
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