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2024-10-31 00:00
(連載2)揉めるカナダとインドの関係
岡本 裕明
海外事業経営者
ところがインドのモディ首相にしてみれば仮にそんなことをインドの秘密組織が実行したとしても「はい、やりました」とは逆立ちしても言えません。そのため、カナダのトルドー首相に逆に食って掛かるという事態になっているのです。そこでカナダとしては証拠を固める必要があるわけです。双方の外交官追放合戦は当然ながら外交に重大な問題をきたします。特にカナダにインド系カナダ人は180万人強がいてうち、シーク教徒は50-80万人程度いるとされます。うちバンクーバー近郊はその最大拠点です。双方のトラブルによりビザの発給をはじめ各種経済交流が滞る可能性が指摘されており、隠れた外交問題になっています。
ではこれはトルドー氏の失策なのでしょうか?ここは評価が難しいところです。トルドー氏は習近平氏やトランプ氏ともうまく立ち回ることができず外交は下手というイメージがあります。今回のモディ首相とのあまりにも冷たくなった関係もトルドー氏の駆け引き下手が引き起こしている面も多々あるでしょう。
一方、トルドー氏のカナダ国内での支持率は低迷しており、来年秋の期間満了を待たず解散総選挙をするのではないかとささやかれています。ただし、やればほぼ負けて保守党が政権を奪い返すとみられています。個人的には今年にも解散はあり得るとみています。理由は25年1月からカナダはG7の議長国になり、あらゆる分野の閣僚を中心とした国際会議がカナダ各地で開催されます。そのため、途中で顔が変わるより始めからリフレッシュした方がよいだろうという計算が働くのではないかとみています。(もちろんトルドー氏は自分が仕切ると今でも思っているはずですが。)
アメリカの大統領選でトランプ氏が当選すればトルドー氏の背中は更に押されるかもしれません。トランプ氏から見れば「まだ首相をやっているのか?」と軽いジャブが入るでしょうし、両国間の関係は極めて重要かつ緊密な中でトップ同士が会話ができないのはうまくないからです。最近思うのは国家間の関係は地球儀ベースでみるとあちらこちらで歪が入っている点です。どの国も天敵がおり、その関係修復に極めて苦労しているというのが実態だろうと思います。戦後、長らくこのような問題は封印されており、ごく一部の地域紛争にとどまっていたものが各国で噴出し始めているように感じます。今回の外交事件もその一端であり、今後世論も含め、外交がより密接な課題になりそうな気配を感じます。(おわり)
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