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2024-09-08 00:00
(連載2)苦境のインテルとフォルクスワーゲン、何を間違えたか?
岡本 裕明
海外事業経営者
そこで起死回生の一発がEV化であったはずです。もともと環境問題に敏感な欧州ではVW社の排ガス不正問題からスタートしてEVが政治主導で席巻したもののここに来て本格的な調整局面に入ってしまいました。ボルボ社はかつていち早く30年までにオールEV化宣言をしていたのについに撤回したぐらいです。更に中国製の安価なEVが市場を混乱させ、EUはようやく中国製EVに対する関税率を大幅に引き上げる措置を行うところです。
ところがその前にVW社の体力が失われてきた、こう見るのが正解でしょう。特にEVの時代が確実に来ると見込んでいた多くの関連産業界にとって需要側(顧客)が買わないことで当てが外れました。フォルクスワーゲン社はポルシェやランボルギーニなど高級ブランドを傘下に持つ一方、同社の車は大衆車製造に特化しています。ところが同社の車は全般的にデザイン性に欠け、例えば北米では苦戦の連続でアメリカ市場などへは過去何度もテコ入れを図っていますが、うまくいきません。インテル、フォルクスワーゲンは確かにそれぞれの業界で大帝国を築いた実績があります。ただ、それらは昔の話であり、栄華はなかなか続かないのです。それを栄枯盛衰という言葉で切り捨てるにはあまりにも単純すぎでその奥底の理由を探る必要があると思います。
アメリカでUSスチールが日本製鉄による買収がなされないならば大量のレイオフや本社移転を含めたリスクがあると同社経営陣が述べています。トランプ氏もバイデン氏もハリス氏もUSスチールを守るといいながらそれは黄昏に対する哀愁であり、その3人にとってUSスチールのような小さい会社の存亡はどちらでもよいはずですが、後ろにつく労働組合の票が欲しいがゆえに心にもないことでも平気で口にするわけです。これが逆に企業の生命力を悪化させるとも言えるのです。ちなみにUSスチール買収に興味を持っていたクリーブランド クリフス社はカナダの大手ライバルStelcoの買収を行い、その承認の株主総会が9月16日に行われます。とすればクリーブランドは資金的にUSスチールには手が廻らないとみています。つまりUSスチールは取り残されるのです、大統領達の政治活動のせいで。
倒産や被買収は企業が自立できなくなった際の当然のあるべき姿であり、倒産ではなく、買収されるならば新しい資本が入り従業員にとってプラスのはずなのです。これを大統領や大統領候補になろう人が全然わかっていないのです。バイデン氏がCHIPS法を通じてインテルをそこまでして救おうとすること自体が自助と淘汰の世界に余計な力をかけ、経営の自立性を崩すのであります。今回のタイトル、「インテルとフォルクスワーゲン、何を間違えたか」、私の答えはずばり、政府が手を差し伸べたあるいは政府が主導して何かをしようとしたことが概ね外したということではないかと思います。企業は野性味をもって野に放つ、そこで筋力をつけ、体力をつけ、成長するものなのに政府が檻に閉じ込め、餌をやり飼育計画を作ることでダメにしていると私は強く申し上げたいと思います。(おわり)
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