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2024-07-22 00:00
(連載2)金本位はアメリカの本意か?
岡本 裕明
海外事業経営者
ただし、ビットコインは価値の裏付けがないし、そもそも採掘できる量はどんどん減っています。つまり一種の通貨としての拡大余地はありません。一方、ステーブルコインと称される仮想通貨は一定の現物資産にペッグ(紐づけ)されています。そのペッグを金にするという方法でアメリカ政府が発行する仮想通貨に金の裏付けをさせ、金本位を実質的に復活させることは論理的には可能だと思います。そして中央銀行の無節操な発行通貨の膨張を防ぐことは可能でしょう。たぶん、ここまで想像を膨らませた話をしている人はあまりいないかもしれません。
トランプ氏は現在の中央銀行への不信感が強く出ています。パウエル議長の「クビ案」はひとまず消えて任期満了までは「自分の思惑通りならば」クビにしないとしていますがある意味、中銀に首輪をつけたような状態であります。それはトランプ氏および共和党が健全財政と小さい政府を目指していることが上げられます。おまけにトランプ政権になれば財務長官にJPモルガンCEOというより近年の金融情勢に精通し辣腕をふるうことができる唯一の人物、ジェイミーダイモン氏を起用するのではという噂もあります。
トランプ氏のブラッドはビジネスマンなのです。政治家ではないのです。ここをきちんと理解しないと彼のポリシーは何一つ理解できません。その究極は「儲かるアメリカ」でしかありません。わかりやすく言えばトランプ氏はアメリカ株式会社のCEOになるということです。中銀がせっせと通貨を印刷するのは借金を増やし、不必要にまでばら撒くからいやだという発想です。政府の財政赤字も当然厳しくチェックするでしょう。企業のバランスシート管理では負債を減らし、資産を増やすことがベストです。アメリカも同様であり、その発想の一貫で金本位はやり方によっては面白い発想だと思います。
ただし、そうなると各国政府は金の在庫を積み上げなくてはいけません。アメリカは8000トン強あり、世界の断トツ。金が好きな中国やロシアは2300トン規模。日本はインドと並んで850トン規模。つまりアメリカの1/10でしかありません。これでは勝負にならないし、金にペッグするアメリカ政府発行の仮想通貨が発行された場合の国際通貨と市場の安定については相当議論の余地があるでしょう。個人的には中央銀行が主体となる世界の金融政策の発想にくさびとは言わないまでも構造的転換への議論の第一歩ぐらいにはなる可能性があるかと思います。「輝きを失わない金」とはよく言ったものです。(おわり)
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