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2024-05-09 00:00
プーチン氏の向かうところ
岡本 裕明
海外事業経営者
プーチン氏が通算5期目の大統領就任式に臨みました。これで6年間の新たな任期がスタートするわけです。終わりは2030年。それなりの大国にもかかわらず、これだけの長期独裁が実行できるのは驚きであります。また、政争のライバルとなるべく相手は死亡、収監などでほとんどおらず、取り巻きには同じような顔ぶれが並びそうです。当然ながら彼ら側近も歳をとっていくわけで老体化するロシアといった方がよいのでしょう。もともと同国は支配する側とされる側が他国に比して鮮明であり、国民が蜂起をしたり、自分で自分の国を作るという発想がないに等しいため、誰が国のトップであろうが、民は「従わざるを得ず」です。むしろ、従うことに慣れているので民主主義の思想が理解できないといったほうが正しいのでしょう。いわゆる権威主義の国は世界では民主主義国家よりも多くなり権威主義国に言わせれば西側先進国は民主主義を押し付け、輸出し、伝播させようとしていると主張するわけです。
ところで日本は民主主義かといえばその通りなのですが、欧米のそれとはまた違う発展を遂げているように見えます。何が違うのか、私がぼんやり頭に浮かぶのは宗教的縛りの違いではないかと思うのです。一神教の場合、教義があり、民はその基本の枠組みに収斂していきます。ところが日本は多神教である故、収斂できず、それを無理にしようとすると摩擦が起きます。例えば政党同士がいがみ合ったり、事業者がおらが村的なスタンスをとるのはその表れではないかと思うのです。憲法改正ができないのも日本国民が思想的に一枚岩になれないのです。つまり日本の民主主義とは言論の自由に見られるように「何をやっても自由」、一方、欧米は「秩序を強要される中での自由」の違いがあると思います。ではロシアはどうかといえばロシア正教会が基本的縛りですからそのトップに立つべき人がその流れに沿っていることが重視されます。ウクライナ侵攻もロシア正教会がそれを支持をしているがゆえにプーチンは自信をもってコトを進めることができるのでしょう。
欧米の民主主義についてみると私は分断化する社会の根源の一つに国内で宗教観の不一致が生じているのだろうと考えています。アメリカやカナダに来る新移民は必ずしもキリスト教徒だけではないし、キリスト教徒にも敬虔なる方、原理的な方からかなり緩い方までいるわけです。カソリックとプロテスタントだけとっても大きく違います。これをひとまとめにするのは容易ではない、これが私の見方です。一方、ロシアは宗教観の上に大国意識と独裁/権威的支配と唯我独尊的な歩みを国家の歴史として続けています。これは国際社会と仲良くする、あるいは連携して何かをするという発想が薄いとも言えます。言い換えればロシア国民の団結力は強いとも言えます。ウクライナは一方で、侵攻前から汚職などで国内統治に問題があり、国民が国を離れて他国に移住するケースが後を絶たなかったのです。このグリップの強さの違いが最終的に国力に表れてしまうのです。ではロシアと中国は本当に仲が良いかといえば心底では全然違う価値観でむしろ私からすれば双方がケンカしない方がおかしいぐらいの相違があると考えています。理由は中国は共産党そのものが宗教であり、習近平氏が教祖様のような体系をとっているからです。プーチン氏と習氏は両者共に野望の塊ですが、共通する敵、つまり西側民主国家と戦うには「敵の敵は味方」のロジックに収斂するのです。こう見ると大局的な西側諸国の戦略としては中国かロシアを抱き込む方が理に適っているはずで、好き嫌いは別として宗教的ブラッド観ではロシアのほうが取り込みやすいという気はします。
ところで地球温暖化でメリットが大きいのがロシアの北極海航行ルートでより使いやすくなっています。2022年は年間88日間開通しており、これは史上最長。今後、温暖化が進めばこのルートの開拓が進むはずで中国もしっかりそこに入り込んでいます。スエズ運河経由のリスクが大きい点を考えると西側諸国にとってこの北極海ルートは垂涎の的でしょう。その昔、学校でロシアの南下政策が日露戦争の背景と習ったと思いますが、温暖化は国家の戦略をも変えてしまいそうです。プーチン氏のロシアはプーチン氏の健康状態の変化ないし国内で革命でも起きない限りしばし続くのだろうと思います。「西側諸国」というように様々な国の利害関係が入り混じり、断固たる姿勢がとりにくいのが弱点です。プーチン氏は一方でほぼ独裁ですから決断力の早さを含め、今後も西側にとって頭痛の種になるとみています。仮にトランプ氏が全く違う切り口で臨むならロシアとアメリカの微妙なバランス外交が成立する可能性も無きにしも非ずというところではないでしょうか?
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