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2024-04-24 00:00
日銀は更なる利上げをするのか?
岡本 裕明
海外事業経営者
先日発表された3月の消費者物価指数は指標となる生鮮品を除いたコアが2.6%、エネルギーも除いたコアコアが2.9%、総合が2.7%でした。私は6月から7月にかけて日本の物価が3%を超えていると予想しています。理由は簡単です。政府が電気ガス代の補助金を5月で止めるといっているからです。つまり6月からそれらの料金は跳ね上がります。しかも暑い夏、冷房を目いっぱい使う夏に補助金が無くなるのです。相当の反発がありそうなのでまた方針転換するかもしれませんが、現状、補助金が無くなるとすればこれで物価がおおむね0.5%上がるのです。すると3月の消費者物価指数のどのカテゴリーから見ても0.5%ポイントを足せば3%は超えてきます。
植田日銀総裁がアメリカで「基調的な物価の上昇が続けば、金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と発言しました。アメリカでよく使われるタカ派、ハト派の表現を使うなら黒田氏はタカになろうとしたハトで、植田氏はハトのような気遣いを見せるタカではないかと思っています。植田氏は様々な情報を持ち合わせている中で物価高がディマンドブル型から再びコストプッシュ型に変わりつつある可能性を見ているのでしょう。コストプッシュ型、あるいはスタグフレーション型とも言ってよいのかもしれませんが、輸入に頼る日本において海外物価の上昇と円安のダブルパンチで物価が上がることを考えているように感じます。では政府はこの物価高にどう対応するのでしょうか?個人的には日本は過去30年以上、物価に対して非常にセンシティブになりすぎた、これがある意味反省点だと思うのです。日銀も政府も物価の上昇に対する国民からの圧力に屈してきた、これが実情だと思います。なぜかといえばバブル経済の崩壊後、賃金が下がり、生活の安定感が失われ、現状維持がやっとという国民生活に対していかなる理由にせよ物価の上昇は生活苦を演出し、政府が持たないという認識の循環だったのです。
1990年代前半、バブル崩壊後しばらくした頃、金利は今後上がるのだろうか、という議論があった際、新聞の論調は「今金利を上げれば住宅ローンと商工ローンが上がるので個人の家計のみならず、事業者の経営に劇的な影響を与えるからそんな恐ろしいことはできない」が当たり前のように語られていたのです。平たく言えば「私は病人。なのにそんなに鞭打つ気か!」という声であります。問題はいつになったら病人が回復するのか、であります。私は30年たった今、病気はとっくに癒えているのに甘え癖がついた、そして親である政府も甘やかしたと思っています。「ふざけんな!」というお叱りがあるかもしれません。が、日本に星の数ほどある税金を払えない会社や内向き志向の若者を見ていると平和な日本という良い面に隠れてまるで老後の人生を楽しむお年寄り国家にしか見えないのです。植田氏が中心となって日銀の過去20-30年の政策について現在検証作業が進んでいると認識しています。私がここに書いている内容そのものになる気がしています。ならば金利が上がる⇒もっと働く⇒企業が儲かる⇒賃上げする の循環を作り出すしかないと思うのです。その点で黒田氏の10年間はまさに失われた10年だったと私は思っています。もちろん、あの民主党政権から引き継いだ当時はひどすぎたので黒田氏はある意味水面下から低空飛行ながら水面上に上がったものの高度が上がらなかった、これが正しい表現かもしれません。植田氏はその点、しっかり、高度をかせぐ政策に移行するだろうとみています。
GDPが2025年にインドに抜かれそうだとIMFが試算しています。23年度にドイツに抜かれ、世界第3位になった経済大国日本は今後、10年ぐらいのうちにさらにランクを下げていく見込みです。かつては数多くの経済や研究、教育分野でトップクラスだった日本を知っている身としてはさみしいというより国家の栄枯盛衰とはこんなに急激なものなのか、と思ったりするわけです。日本は高齢化社会でもうそんなに歯を食いしばりたくないという気持ちもわかります。しかし、若者もたくさんいるのです。生まれてくる子供たちもそれでも毎年70万人以上いるのです。その子たちに夢や希望がなければ将来結婚もしないし、子供も作らないでしょう。少子化の理由なんて結局、将来の生きる愉しみのビジョンを持てるかどうか、そこにあるのです。小手先の支援金でどうこうなるものではないのです。とすれば政府が骨太の成長プランや夢ある日本のピクチャーを描く、これが日本をハッピーにする最大のエネルギーであり、そうなれば植田日銀総裁が「利上げしたいなぁ」という気持ちに対して「わかりました!」と答えらえるのではないでしょうか?
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