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2024-03-24 00:00
最近の金融状態
真田 幸光
大学教員
金融緩和をして、景気を浮揚していくことは、洋の東西を問わず、様々な国で取られる景気浮揚策の一つである。そして、異常な金融緩和をしてまでも景気浮揚させたいとする政策の一つが、本来は「禁じ手」であるマイナス金利政策である。しかし、いくら金融緩和をしても、その資金を使い、それがキャッシュフローに結び付くような投資案件とならなければ、金融緩和された資金は実体経済の浮揚に役立つ資金とはならず、余剰資金=バブル資金、投機資金となり得る。そして、今はそうした余剰資金が、主として、「信頼の出来る、流動性の高い投資の場」として認識されている「先進国の株式市場」に流れ込んでいるとも見て取れる。
また、余剰資金が借金をさせての消費に流れていけば、過剰消費は、一時は景気浮揚に貢献するかもしれぬが、市場金利が上昇し、借金を返済できない状態にでもなれば、その不良債権化の事態が、大きな金融恐慌に陥る危険性にも繋がる。それが第二のサブ・プライム・ローン問題、そしてリーマンショッククラスの大恐慌が発生するリスクとも言える。こうしたことから、行き過ぎた金融緩和はやはり是正されなければならないと筆者は考え、訴えてきているが、その副作用はあまりにも大きいと考えられて、日本では、マイナス金利政策がこれまで継続されてきた。
一方、新型コロナウイルス感染拡大後、そして、ウクライナ紛争が世界的なインフレを引き起こして以降のこれまでの3年間は、世界の株式市場のボラティリティは、極めて高くなっていたが、その中心にいた人物は、実体経済の中で活躍、注目されているテスラCEOであるイーロン・マスク氏などではなく、米国の中央銀行に当たるFRBの動きを左右するパウエル議長である。国際金融市場は、パウエル議長の一挙手一投足に注目し、パウエル議長の一言、一言に反応してきている。それだけ金融政策の核となる「金利」の影響力が、これまで以上に強力な、重要な要因ともなっている。そしてそのパウエル議長は、バイデン政権からの、「利下げ期待=利下げ圧力?!」があったであろうが、原油価格や国際物流価格に見られる「世界的なインフレ再燃の危険性」が残る中、この3月の利下げは見送り、現状維持のスタンスを取った。米国の利下げが遠のく中、金利が高止まりしている米ドルは他通貨に対して、特に金利の絶対水準の低い円に対してはまだ相対的な米ドル高・円安水準となっている。
一方、日本も、たとえ副作用が大きく、経済がいっとき、傷んでも、バブル経済に終止符を打ち、行き過ぎた金融緩和策を是正する為に、通貨緊縮・金利の引き上げを実施していかなくてはならなくなっていた訳であるが、その日本はやっと異常なマイナス金利政策を転換した。但し、日本の金融当局の姿勢を詳細に見ると、実態的には、金融緩和スタンスを基本的には維持しつつという条件付き政策転換であると見られ、メガバンクも一旦、短期プライムレートを据え置くと言った形で対応、「徐々に、正常に戻す。」と言う姿勢を日本の金融界全体で取っていることから、当面大きな混乱は無いものと期待したいが、その副作用としては、円高への転換がすぐには見られなかった。その一方で、金融引き締め姿勢に転ずると、普通は株価が下落するのであるが、こちらは、幸いにも、むしろ株価上昇が見られた。こうして、少し理屈では分かりにくい状況が見られ、不安定な状況が残念ながら続く可能性はあるが、大混乱にまでは陥らぬ金融状態となっていると見ておきたい。
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