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2024-03-07 00:00
ライドシェア一部解禁は日本的プロセス
岡本 裕明
海外事業経営者
ライドシェア、どうもこの言葉に私はしっくりこないのです。90年代にアメリカで仕事をしていた時、多くの従業員はライドシェアをしていました。それは同じ地域から同じ方向に通勤する人たちが1台の車に乗って通勤するというもので、例えば月曜はAさんのクルマ、火曜日はBさんのクルマ…といったこともあるし、いつもAさんの車に乗る代わりにAさんにガソリン代や車の損料を払うといった感じもありました。シアトルでの話なのですが、カナダからメキシコまで繋がる国道5号線はシアトル地域の主要幹線道路で当時、車線を増設しても増設しても渋滞がひどかったのです。ところが、相乗り専用レーンが出来て渋滞を片目にスイスイ車が流れたことでライドシェアが一気に普及しました。
ライドシェア、その言葉の通り、一台の車に同じ目的地の人が共に乗る、これが正しい意味です。つまり我々が今、一般的に使っているライドシェアは若干意味が違うのです。「ウーバー」は相乗りが出来るものの用途を見ればほぼ白タク、私はそれ以外の表現が正しいとは思いません。本質的な意味でのライドシェアとは違うのです。が、世の中がそういうのでやむを得ませんが、ライドシェアと申し上げましょう。日本では今年の4月から一部地域で条件付き解禁になりますが、なぜかタクシー会社の管理のもとで許されるという訳ワカメのスタートとなります。タクシーと何が違う、と言われて厳密に説明できるかと言われればやや難しいかもしれません。日本でライドシェアが長らく許可されなかった理由は2つ。1つは二種免許と称される旅客を運ぶ免許が必要だったこと、もう一つが車両の整備であります。ただこの二種免許の定義がわかりにくいのです。その説明は「運賃など営利を目的とすること」であります。では幼稚園やデイケアの運転手はといえば、こちらは普通免許でOKです。理由は営利ではないし、運賃を取っていないからです。ただ、送り迎えは間接的なサービス業務であり、利用者の経済的便益はあるはずなのですがそこはあいまいなのです。
では地方都市でよく見かける運転代行サービスはどうでしょうか?街中の飲み屋まで自分で運転してきて、帰る時だけ代行業者にその車を運転してもらうサービスですが、こちらは二種免許が必要です。営利目的だからでしょう。つまり普通免許と二種免許の本質的違いは直接的な稼ぎにつながるかどうかの違いで運転技術に関して免許を取る時にはそれなりにハードルはあるでしょうが、実質的にはあまり明白な相違があるとは思えません。次に車両整備ですが、営業車は3か月ごとに法定点検があります。これも昔のクルマで壊れやすく、性能が劣る時代ならともかく、現代においてそこまで高いレベルを要求するのはやや違和感があります。それら2つのハードルを取り去るのが今回のライドシェアであります。つまり、普通免許で一般車両で運転できる、これが大きなポイントです。それでもタクシー会社の運営の下での暫定的許可というのは国交省は「激変緩和措置」を取っていると考えています。もちろん、タクシー会社からの政治家を通したプレッシャーはあったはずですが、それ以上に世の中の仕組みが急激に変化することで過度の社会的影響を和らげるという意味が主たる理由だと想像しています。
個人的にはそれほど遠くない時期、数年中に全面解禁になるとみています。それは東京など都市圏でもタクシー運転手の平均年齢が58歳を超え、運転手がどんどん減っている実態を踏まえ、代替措置が早急に必要になるのは火を見るよりも明らかなのです。緩和しないとタクシーをつかまえるのが至難の業になるでしょう。そもそも高齢化社会を迎えるとタクシーへの潜在的需要はどんどん高くなるのです。高齢者層からは「海外旅行で成田に行くのに荷物持って電車で乗り換えしながらなんてもういけない。タクシーが当たり前。」という声はよく聞こえてくるのです。空港に限らず、荷物を持っていたり、足腰が良くない高齢者の足としてタクシーは今後需要増大が見込める業種なのです。ただ、これも暫定的な話で30年代になれば自動運転のライドシェアが普及するとみており、小難しい規制のライドシェアは何だったのだろう、という話になるとみています。アプリで自分の乗る車が何処にあるか一目瞭然、値段も明朗、道は最も早くつける方法をAIが探し出すのです。そういう意味では役所も前例主義の縛りから抜け出し、新しい世界をどう取り込むか、もう少し前向きになってもらいたいところであります。
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