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2024-02-15 00:00
トランプ氏の外交
岡本 裕明
海外事業経営者
もしも日本政府が輸入品の関税を一律10%にし、特に中国製品は60%にし、海外企業による日本企業への買収をしにくくし、脱炭素化も「けったいなこと」とし、TPPやQUADを止めて二国間協定に変えようといったらどうしますか?国民の過半は狂喜乱舞しますか?私は凶器乱舞で大混乱が起きると思います。私も国際人の端くれとして様々な人の様々な意見を吸収するチカラはあると思っていますが、トランプ氏がまたやって来ると思うと気が重いのです。前回、大統領になった時は想定外の当選で本人も好き勝手な放言をした状態で大統領に就任しました。その点で大統領としての手腕は素人であったのです。ところが今回、仮に当選すると確信犯として政策の転覆を図るわけです。そしてトランプ氏の支持層である保守派の多くは高等教育ではなく、それこそ自分の住む州から外に出たこともなく、ニューヨークの摩天楼はテレビでしか知らないという人たちに「外交?なんだそれ?それより俺の生活だろう」という心の叫びをトランプ氏が「俺が聞いてやる、俺が実現してやる」というわけです。
直近の報道でNATOの加盟国に向け「軍事費を適切に負担しなければロシアが攻撃してきても米国は支援せず、むしろ『好きに振る舞うようロシアをけしかけてやる』」と述べています。背景はNATOに加盟する31カ国のGDP比の国防費負担が十分ではないことがあります。目標は2%ですがそれに達しているのは半分以下。しかもトランプ氏は2%ではなく4%ぐらいにしないとダメだと主張し、出来ないなら防衛義務は果たさないというわけです。この理論、はっと思い出した方もいるでしょう。トランプ氏が大統領時代、韓国と日本に向けて発した防衛費負担増額の話と全く同じなのです。トランプ氏の気持ちを代弁すると「お前らは皆バカだ。軍備拡張をするためのルールを作るのではなく、問題解決を図る算段を考えることが大事なんだ。だから俺はウクライナ問題は一日で解決すると言っただろう。お互いが意地の張り合いをするのではなく、ディールをすれば早く安くうまく解決できるのだ」と。この心の内が正しければ東アジアの危機も「ロケットマンは俺に任せたら言うことをすぐに聞くぞ」「中国も時代に合わない思想と制限をしたから恐竜時代の滅亡と同じ末路を辿るのだ。図体がでかい者はより強くするために自国を守らねばならないのだ」と。
トランプ氏が大統領になるかどうか、これは分かりません。私はまだその確率は半分以下だと思っています。理由は国民の過半ともいわれる無党派が誰に投じるか次第だからです。そして無党派の声は聞こえてこないのですが、私の見方では消極的理由でバイデン氏に入れるのでしょう。理由は中流階級はそこまでの激変効果を求めていないと思われるからです。アメリカは成熟国家なのです。そしてアメリカに生まれ育ち、生活することに高い誇りを持つ人にとって諸外国との関係は直接にせよ、間接的にせよ何らかの関係はあったりするものなのです。私はその人たちが最終的に「現状に保守的な選択をする」とみています。アメリカは政変を求めるほど不安な経済状況ではないのです。敢えて言うなら社会不安はありますが、トランプ氏の外交ではアメリカは今より不和になり、貧乏になる公算はあると思います。ビジネスでもそうですが自分の思い通りにならないことはあります。よってfail safe (失敗時の安全策)のback up plan(代替案)は用意するべきなのでしょう。日本、カナダ、メキシコは影響が大きいと思います。その密着度が高いからです。基本的にはトランプ氏の言うなりになるので振り回される覚悟は必要です。特に経済と安全保障、東アジア外交には大きな影響が出ます。
経済は輸出関税を要求されそうです。問題は中国が60%で他国が10%である場合、中国はすでに行っているう回輸出を強化するはずです。アメリカがそれを見過ごすかどうかで変わるでしょう。USMCA(アメリカ、カナダ、メキシコの貿易協定)はトランプ氏が作っただけにこれには手を付けない可能性があるのでカナダとメキシコからのう回輸出が激増するかもしれません。とくに中国はメキシコに多額の直接投資をしているので構図が変わるかもしれません。安全保障はNATOについては上述した通りでロシアとディールをしようと画策しているような気もします。ロシアに恩を売り、その見返りを求めるのです。最大の焦点はイスラエル政策ですが、これはイスラエルへの強力な支援を掲げ、ハマスなどイスラム原理主義に関係する人物のアメリカ入国拒否を既に口にしています。これらの外交政策にアメリカ国内での世論が大きく揺れる公算があります。
東アジア外交については金正恩氏が戦争時には韓国を支配下に置き、統一すると断言したので韓国人の民意が大きく変化するかもしれません。韓国総選挙を控え、中道左派が再び騰勢を増すかもしれません。トランプ氏は「半島のことは半島が決めること」と突き放すこともありうるでしょう。台湾海峡については興味ないと思います。トランプ氏はそれよりも中国の不公平で不平等で不正直な姿勢に対峙するというポジションを取り台湾に焦点を当てた話は二の次にするとみています。トランプ氏の外交は予想は難しくないのですが、「そこまでするか?」というチカラが人々を圧倒し、唖然とさせ、「出来ないなら…」と厳しい条件を突き付けられることに各国の政治家も自分が傷つきたくないので言いなりになるのです。トランプ氏は人生において後がないのです。プーチン氏とその点は似た者同士にある中での選挙戦だという点がポイントかと思います。
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