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2023-10-24 00:00
中国に対する警戒感を持つEU
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
習近平国家主席の三期目になり、様々な「ひずみ」が生まれてきている。実際に、2期目に関しては、ちょうどEUがギリシアの債務問題などがあり、またイギリスのブレグジットがあって、ヨーロッパが揺れている時期であった。その為に中国からの経済支援(投資が中心であったと思うが)がありがたいというような話になっていた。その中国の経済支援を最も敏感に感じて拒否反応を示したのが、イギリスであった。イギリスのエリザベス女王(当時)は、習近平国家主席の来訪に対して、一応の外交儀礼を行っていたが、手袋をしたままトイレの前で握手するなど、本来であれば外交的に無礼であるというようなことを行った。また晩餐会では、チャールズ皇太子(現在の国王)は、ドタキャンするというような形で写真を見ても空席のままになっていた。そして極めつけは、後にエリザベス女王の発言として王道された「習近平は下品」という言葉である。この言葉が伝わったことでイギリスおよびコモンウエルスの各国において、中国を警戒する行為が非常に強くなったのである。
そのコモンウエルスで最も敏感に反応したのは、オーストラリアであった。オーストラリアは、過去に中国に国を乗っ取られそうになったり、または港を完全に支配されてしまったりというように、かなり散々な目にあっている。同時に中国系移民は、もともともオーストラリアの人々(原住民というとまた意味合いが変わってくるので、コモンウエルス系のイギリス系移民という意味)に非常に評判が悪い。基本的にヨーロッパや東南アジアにおいては、入国カードに「宗教」を書く欄がある。なぜこれらの国は宗教を書かせるのかといえば、それは宗教で何らかの差別や区別があるわけではない。宗教によってどのような道徳観を持っているのかということをしっかりと確認し、それによって犯罪などの防止につなげるということがある。つまり「宗教がある」というのは、自分のところの宗教とは異なっていても、何らかの道徳観があるということになるのである。しかし、中国などの国々は「コミュニスト」であって「宗教」があるわけではないということになるのではないか。最終的には「道徳観のない人々」が金を持ってくるということに、警戒感を示したことになる。
まさにイギリスのエリザベス女王は「金銭的な価値」ということではなく「人間としての品格」で物事を判断していたと思う。そのことから「債務の罠」のような金銭的な力で相手を支配しようとする中国・習近平のやり方を「人間として下品」というように映ったのに違いない。そしてその経済力に屈しているEUの国々に対して「イギリスはそのような国ではない」ということを強く示したのである。その結果、当時中国と関係強化に動いていたキャメロン首相は、ブレグジットを機会に失脚し、メイ首相・ジョンソン首相というように変わってくるということになるのではないか。そのEUが変わってくるのは、ドイツのメルケル首相からショルツ首相に代わったあたりであり、また、その後ロシアがウクライナを進行し、そのロシアを中国が支援しているということから、ヨーロッパの国々は中国を警戒することになる。単純に「金銭」つまり「現世の目の前の利益」だけを求めて動くことは、そのまま「現世利益のために、秩序を乱す可能性」を示しているのであり、そのことが、「下品」というよりは「危険」というように判断したということになるのである。
日本でいえば「成金」という言葉があった。まさに「にわかに金持ちになって品格もなにもないくせに一流ぶった態度をとる」というようなことである。日本人の場合は「金銭でしか自分の価値を示すことのできない人々」という意海で蔑称を込めて「なりきん」という単語を使っていたのであるが、最近はマスコミの必死の共産主義化洗脳によって、金があることが善いことであるかのような宣伝で、品格や道徳を無視するような風潮になってきているのではないか。まさに「唯物主義的な金持ち」というのは、人格や仁徳ということを無視してしまうので、結局は「債務の罠」のような形になってしまうものではないか。さて、その中国をEUもやっと警戒し始めたという。もちろんヨーロッパの中にはもともと東欧、ワルシャワ条約機構に加盟していた人々が少なくなく、その人々までそのような価値観になっているのかどうかわからないということになる。国際秩序を中国中心に作り替えようとしているという警戒は、つまり「中国の身勝手と覇権主義を認めてよいのか」という疑問を呈しているということになるのではないか。まさにそのことが、そのまま「大きな問題」と見ているのである。そしてその延長線上に「覇権主義によるパックスシノワーズが成立してしまうのではないか」という危機感を持っている。さてEUは、そうはいっても財政難が大きく、通貨を統一しながら政策が別々という問題が出てきているし、EUで一つの国になるようなコンセンサスは取れていない。現在のウクライナ支援に関してもEUとNATOはまったくことなる反応を示しているということになる。その内容をどのように調整つけてゆくのか。その時に中国との関係をどのようにしてゆくのか。そこが大きな課題としてEUの「踏み絵」になるのではないか。
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