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2023-09-27 00:00
不振の中国経済
舛添 要一
国際政治学者
中国の経済不振が深刻になっている。今年の4〜6月期の実質GDP成長率は、前期比年率で+3.2%である。プラスではあるが、1〜3月期は+9.1%だったので、ここに来て大幅に低下しているのである。中国経済不振の原因は、個人消費が伸びていないことである。将来への不安から中国人がかつてのようにお金を使わなくなっている。7月の名目小売り売上高は前年同月比で+2.5%であり、6月の+3.1%よりも下回っている。賃金上昇率がコロナ禍前の水準以下であり、これでは個人消費が伸びないのは当然である。
企業の設備投資も拡大していない。それは、対米関係の悪化などにより、輸出が伸びないのではないかという懸念があるからである。また、政府によるインフラ投資も低迷している。それは、不動産不況が影響しており、地方政府による土地販売の収入が減って、投資の財源が減っているからである。不動産業は、中国のGDPの4分の1を占めている。その不動産業の4〜6月期のGDPは、前年同期比マイナス1.2%となっている。48兆円の負債を抱える不動産大手の恒大集団が、8月18日、ニューヨクの裁判所にアメリカ連邦破産法15条の適用を申請して、世界に大きな衝撃を与えた。6月末時点で、恒大集団の債務超過額は13兆円に膨らんでいる。販売のめどがつかない開発用不動産は22兆円にもなる。また、最大手の「碧桂園」は、8月30日、今年前半の最終利益が9800億円(489億人民元)の赤字に転落したことを発表した。米ドル建て社債の利払いが延滞する状況になっている。
バブルが崩壊した30年前の日本では、不動産価格の高騰に対し、1990年3月、大蔵省が金融機関に対して総量規制という行政指導を行った。 不動産向け融資の前年比伸び率を総貸出の前年比伸び率以下に抑えるという内容で、その結果、貸し渋り、貸し剥がしが生じ、資産デフレ、バブル崩壊へとつながった。習近平政権は、現在、30年前の日本と同じような政策を採用し、不動産会社の借り入れに上限を設けた。具体的には、2020年夏には(1)総資産に対する負債の比率が70%以下、(2)自己資産に対する負債比率が100%以下、(3)短期負債を上回る現金を保有していることという規制(3つのレッドライン)を、2021年1月には銀行の住宅ローンや不動産企業への融資に総量規制を課した。借金でマンション開発を続けてきた不動産会社は、建設工事を継続することができなくなり、新たに売却する物件がなくなり、多額の負債を抱えることになった。そして代金を払ったにもかかわらず、新築マンションを入手できなくなった多くの国民の不満が爆発している。
万人が平等であるという共産主義社会で格差が拡大しており、それを是正するために習近平は「共同富裕」をうたっている。不動産業界への規制強化もそのためであるが、現実は期待通りには行っていない。中国も、日本と同じように低迷の30年、デフレの30年に突入するのであろうか。中国社会には、高度経済成長時代のような躍動感が見られない。人々は諦めにも似た感情を抱いており、「ゴロゴロ寝て、何もしない」のが流行のようになっている。習近平政権は、国民に夢と希望を与えることができるのであろうか。
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