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2023-05-23 00:00
G7サミットの意義とこれからの世界
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
5月19日から21日までの期間、広島において日本を議長国とした先進7か国首脳会議が行われた。この会議について、岸田首相は「歴史的な」という表現を使った。その表現の意図するところと、我々が感じているとことが同じであるとは思えない部分があるのであるが、それでも、ある意味で昨年のサミットとは異なり、ある意味でサミットの内容が変わったのではないかという気がするのである。というのも、一つ目には、グローバルサウスと言われる国々が多く入ってきているということである。まさに、先進7か国の首脳会談ではなく、その先進7カ国に次ぐ国々も参加するサミットになった。ある意味で「限定する」モノではなく、「拡大するもの」としての会議体が行われたということになる。
もう一つは、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことであろう。ある意味で、「敵」を作った形でのG7は初めてではないか。G7は、1冷戦下の1973年のオイルショックと、それに続く世界不況に起源を持つ。アメリカ財務長官ジョージ・シュルツは、将来の経済的課題を討議する会議を模索するため、西ドイツ・フランス・イギリスからそれぞれ財務大臣(ヘルムート・シュミット、ヴァレリー・ジスカールデスタン、アンソニー・バーバー)を招集し、ワシントンD.C.で非公式の会合を行った。1975年、フランスで大統領となったジスカールデスタンは、ライブラリーグループのメンバーに日本を加えた“工業化された4つの主要民主主義国”の首脳をフランスのランブイエに招待し、フランスを含めて5か国で初めての首脳会議を開き、定期的に首脳会議を持つことを提案した。このときの出席者は、主催国(議長国)を持ち回りで交代しつつ年に1回会議を持つことに合意した。こうしていわゆる「G5」が生まれた[28]。しかし、これを不服としたイタリアの首相アルド・モロが第1回会議に乗り込んで来た為、イタリアを加えG6となる。しかし、これではヨーロッパに偏る為、翌年のプエルトリコの首都サンフアンでのサミットで米国のジェラルド・フォード大統領の要請によりカナダが参加し「G7」となる。
このように、元々は「経済」に関する内容である会合が今回は「平和」を訴える者になったのである。平和を訴えるということは、逆に言えば「平和ではない」ということの象徴となるものである。同時に「敵がいる」ということになる。それをG7の国々だけではなく、そこに集まった国々が、「共通の敵」として認識したということになる。ある意味で「国連の敵国条項」にある日本において、日本やドイツが、アメリカやイギリスなどと一緒になって他の国を敵にした転換点が図られたということを意味しているのである。そして、その敵国が「ロシア」と「中国」であるということがよくわかるのではないか。そのうえで、核兵器の根絶を願ったということはある意味で、「平和を目指すサミット」が行われたということ位なるのではないか。当然に、この内容に関して中国とロシアは強く抵抗している。ロシアが抵抗するのは、ウクライナのゼレンスキー大統領が出席したことで明らかであると思われるが、中国が過敏に反応している事は非常に面白い。それだけ「中国の国内に危機感がある」ということであり、実際にすでにウクライナと戦っているロシア以上に非難の声が大きい。まあ、縫い本のマスコミがそれを大きく報じているということもあるのかもしれないが、しかし、「大使を呼び出してクレームをつける」などと言うのは、なかなかやりすぎではないか。G7という国際会議の内容を日本だけを呼び出すというのは、なかなか興味深い内容であるということになる。もちろんそれだけ日本は「何でも言いやすい国」であり、「何を言っても怒らない国」なのであろう。
さて、「核兵器廃絶」などと言うことを言っても、それがスローガンで終わってしまい、結局はなくならないことは多くの人がわかっているのではないか。それを平和であるということを「スローガンにすること」で何が変わるのかということもある。その平和を訴えた後に、広島でそのままクワッドも行われているところが面白い。つまりは「今回のG7で集まった国々での新たな世界秩序」と「中国やロシアによる世界秩序」ということの対立時期が明らかになった会議ではないか。さて、岸田内閣に股は日本国民にそれだけの覚悟があったのかということは、甚だ疑問である。しかし、「外圧」によって、そのことが行われたことが、最大の面白さであろう。
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