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2023-03-16 00:00
春なのに核脅迫がつづくウクライナ 戦争二年目へ
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「ロシアが侵攻を続けるウクライナの首都キーウを20日訪問したバイデン米大統領は、ゼレンスキー大統領との共同記者会見で『プーチン(ロシア大統領)による征服戦争は失敗している』と述べた。ウクライナを断固として支援し続けると強調。ロシア企業に対する追加制裁を週内に発表すると明らかにした」(2024/02/22共同通信)。
コロナウィルスを片目で追って、もう一方の目でウクライナ情勢を注視するという日々が始まって早くも先週でついに2年目に入った。この間の戦況は一進一退、その詳細は知る由もないが、ロシア兵の死傷者は20万人余とし、ウクライナ兵も少なからざる損害を受けているもようで、戦争の愚かしさばかりが際立った一年であった。自業自得とは言え世界中からの経済封鎖を受けてさぞやロシア国内の民衆の生活は寒々しい状況に違いないと想像していたのだが、最新の外電が伝えるところによれば、どうしてどうしてレストランなどは家族連れで大いに賑わっていて、一時期品薄が目立ったスーパーなどの陳列棚は今や十分な商品であふれ、中には日本製品なども少なからず目を引くという。「露国封じ込め」を主導してきたはずの、これは何事か?というのが、この一年の戦時世界政治・経済の実態のようである。
バイデン米大統領がウクライナ戦争開戦1年のこの日に合わせてキーウ電撃訪問の企図するところは、これから始まる米国内での大統領選挙へのアピールも有るのだろうが、民主主義陣営内ですら結束できないロシア制裁への捲土重来を狙っての政治的アピールでもあったのだろう。しかし、この状況はもはや世界一強の「パックスアメリカーナ」時代の終焉を示す冷厳たる事実でもある。世界人口の3分の1強を占める中国・インドは言うに及ばず、中東諸国やアフリカ各国を含み足許の中南米諸国までの、いわゆる「グローバルサウス」のほとんどがアメリカの言うことに従う姿勢を示しはしない。第一次世界大戦後の1920年代に始原を持つ「パックスアメリカーナ」はウクライナ戦争を前にしてはっきりと終焉を見せたということのようである。(そういう世界史の画期に及んでもなお身も心もアメリカに捧げようという日本政治の外交選択は何処に視点を着してする判断なのであろうか?)
バイデン氏は、侵攻開始から2月24日で1年となるのに合わせてキエフ入りした。米政府によると、過去に大統領がアフガニスタンやイラクなど米軍が駐留した戦地を訪れたことはあったが、ウクライナには米軍はおらず、前例の無い紛争地訪問だという。支援を加速させ、この急の訪問は民主主義陣営の結束を固める狙いだというが、世界に吹く風はさまざまなつむじを巻いている。まして長引く戦争は、部外者には厭戦気分もわいてきて、氷が割れるように結束もまた溶解して行くことであろう。片やロシアでは、プーチン大統領による連邦議会に対する年次報告演説が行われ、ウクライナ侵攻を引き続き継続し、勝利するとの決意を示すと共に、新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止すると表明したという。
春なのに、核脅迫がつづく戦争二年目が始まった。
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