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2023-03-14 00:00
中国の偵察用気球への対応をどうするか?
舛添 要一
国際政治学者
中国の気球が世界を驚かせている。アメリカでも日本でも話題になっている。アメリカでは、上空を飛行し、東海岸のサウスカロライナ州沖合で米空軍のミサイルによって撃墜された。アメリカは、ICBM基地のあるモンタナ州上空を飛行していることから、これを軍事偵察用のものと判断したのである。撃墜された気球の残骸は海面上の1.5㎞四方に散らばっており、すでに回収され、また水没した機器の回収も進んでいる。今のところ、高さは約60メートルで、重さ約1トンの機器を搭載していたという。気球にはプロペラや舵が装着され、速度や方向を変えられる。また、ソーラーパネルによって電力を供給し、長時間の飛行が可能になっている。高度は約20㎞で飛行していたという。その機器がどのような機能を有していたかは、今後の調査の結果を待たなければならない。中国側は、あくまでも民間の気象観測用気球だと主張しているが、どちら側の主張が正しいかはまだ判断できない。
米国防総省によると、トランプ政権時代に3回、中国の偵察気球が米領空に短時間入ったことがあるという。また、昨年6月にハワイ沖に墜落した気球を回収し、解析したら、中国の偵察用気球であったという。2020年6月に仙台市上空で、2021年9月には八戸市上空で確認されている。しかし、防衛省も特別な対応はとらなかったようである。敵地の偵察ということになると、航空機のU-2偵察機があるし、人工衛星を使って撮影する偵察衛星もある。今回の気球も、偵察機や偵察衛星と同様な機能を持つのみならず、米軍基地にある核兵器、レーダー、ソナーなどからの信号を収集していたのではないかと言われている。つまり、目だけではなく、耳の役割も果たしていたということである。日本についても同様な偵察行動を展開していたとすれば、今後は要注意で、自衛隊が撃墜などの措置を講じることが必要になる。軍事目的ならば、明らかに領空侵犯だからである。
今ウクライナでは戦争が行われているが、軍隊による正規戦の他に、サイバー戦、情報戦などを組み合わせた戦いが行われている。これを「ハイブリッド戦争」という。たとえば、ウクライナ、ロシアの双方がテレビやSNSを駆使して、捏造した画像なども使ったプロパガンダを展開している。それが世界中の人々に大きな影響を与え、国際世論の形成に寄与しているし、国内では愛国心を高揚させるのに役立っている。とくに情報が大きな意味を持ち、情報操作に長けているほうが戦局も有利に進めることができる。今のところ、ウクライナのほうが一歩先を進んでおり、それが、戦車やミサイルなど、西側からの最新鋭の武器の供与をもたらしている。
1945年8月に太平洋戦争で連合国に無条件降伏した日本はアメリカに占領され、日米安保条約体制の下、アメリカの核の傘によって守られることになった。そのために、安全保障、つまり軍事も情報もアメリカ任せになってしまったのである。しかし、今や経済的にも軍事的にも大国となった日本は、独自の情報・諜報能力を持つ必要がある。
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