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2023-02-28 00:00
戦時中の日本の風船爆弾を彷彿とさせる中国の偵察バルーン
浜田 和幸
国際政治経済学者
1945年の2月4日といえば、ソ連のヤルタで米英ソ3国の最高指導者が会談し、ソ連による対日参戦に関する密約を締結した日です。当時の日本はソ連の動きを把握できておらず、ソ連が日本との間で結んでいた中立条約を守るものと勝手に信じていました。日本のお人好し外交の最たるものといえるでしょう。事程左様に、国際政治や外交の裏舞台では「噓も方便」というのが大原則なのです。要は、騙された方が損をするということに尽きます。
さて、今月初週、世界を騒がせたのはアメリカの領空に出現した中国製の巨大バルーンです。日本上空からアリューシャン列島を経由し、カナダを抜け、アメリカのモンタナ州上空で一般人の目に触れることになり、大騒動となりました。米軍の間では、第二次世界大戦末期に日本軍が開発し、アメリカの本土攻撃に使った風船爆弾「ふ号」を彷彿とさせたようです。アメリカの領空を侵犯しており、国際法にも違反しているため、米軍は撃墜を考えたようですが、バイデン大統領から「攻撃中止」命令が出たことで、最悪の事態は回避されました。中国政府は「気象衛星が偏西風の影響で針路が外れてしまった」と弁明。しかし、この問題で、当初、この週末から予定されていたブリンケン国務長官の訪中は延期となりました。昨年、バイデン大統領と習近平国家主席の間で合意されていたハイレベルでの米中対話の流れが押し戻された形です。
なぜこのタイミングで、中国製のバルーンがアメリカ上空を動き回っていたのでしょうか。実は、米軍はこのバルーンは単なる気象観測ではなく、米軍の核ミサイル基地に関する情報収集を行っていると受け止めています。更には、このバルーンには電磁波攻撃兵器(EMP)が組み込まれており、アメリカ本土の電気通信システムを瞬時にマヒさせる能力があるのではないかと危惧しているようです。そうした危惧や不信感も根強いため、アメリカ議会の軍事委員会からは「捕捉して実態を解明すべき」との声も出てきました。
そもそも、日本上空で確認されてから相当な時間が経過しており、アメリカ本土の上空で攻撃すれば破片が地上に落下し被害も想定されるでしょうが、その前の段階で海上にて捕捉することもできたはずです。米国防総省の説明では、同様の中国製バルーンが南米でも目撃されているとのこと。果たして中国の狙いは何なのか、そしてバイデン政権は「軍事的脅威ではない」と無視する姿勢ですが、であればなぜブリンケン国務長官の訪中をドタキャンさせたのでしょうか。日本の知らぬ間に、米中の舞台裏では熾烈な交渉戦が勃発しているようです。
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