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2023-02-25 00:00
汚職大国ウクライナ
舛添 要一
国際政治学者
1月24日、ウクライナでは多数の政府高官が辞任した。贈収賄などの汚職が原因で解任されたのである。ロシアとの戦争の最中に汚職がはびこるということは、常識では考えられないことである。ウクライナ国民が苦難に耐えて一致団結して抗戦しているという「美しい神話」が世界中に流されていただけに、驚きを以てこのニュースに受け止めた人が殆どだろう。しかし、実は汚職こそウクライナの十八番なのである。
Transparency International の調査による腐敗認識指数世界ランキング(2021年)をみると、全対象国180カ国中、最もクリーンな1位はニュージーランド、2位がフィンランド、3位がデンマークとなっている。日本は18位である。ドイツが10位、イギリスが11位、カナダが13位、フランスは22位、アメリカは27位、イタリアが42位である。最下位の180位は南スーダンである。ウクライナは122位で、ロシアは136位である。いずれも汚職が当たり前の政治風土となっている。共産主義体制の下では、「万民が平等」という謳い文句とは正反対に、権力者に富が集中し、生き残るためには、上から下まで賄賂を使うのが日常茶飯事となっていた。ロシア人もウクライナ人もそのような社会の中で生きてきたのであり、それはソ連邦が解体した後も全く変わっていない。
ソ連邦崩壊の過程で、ロシアと同様に、ウクライナでも国営企業が民営化され、富が一部のオリガルヒ(政治的な影響力を行使する富裕な実業家)に集中する状況になった。たとえば、2014年のマイダン革命でロシアに亡命したヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領は、自ら財閥を形成し、巨額の富を着服していたことが判明している。オリガルヒのみならず、官僚機構を含むあらゆる社会システムに汚職がつきまとっており、賄賂なしには事が進まないソ連時代の悪弊がまだ続いているのである。それが経済を低迷させ、ウクライナをヨーロッパの最貧国としたのである。そして、この戦争中でも汚職が止まないのである。ウクライナのような汚職まみれの国は、EUに加盟することはできない。汚職の撲滅が加盟の条件だからである。オバマ政権のときにバイデンは副大統領であったが、息子のハンターとともにウクライナ利権に深く関わっていたのではないかと疑われている。ハンターは、2014年にウクライナのガス企業ブリマスの幹部に就任したが、この企業は検察の捜査を回避するために裏金を使ったという不正疑惑が明らかになっている。
今回、多数のウクライナ政府高官が汚職で更迭されたことは、西側からの支援にブレーキをかける可能性がある。対ウクライナ支援の財源は、西側諸国の国民の血税である。ウクライナ戦争で光熱費や食料品価格など、諸物価が高騰し、国民は苦しい生活を強いられている。それにも関わらず、支援の裏側で、それが一部の者の私腹を肥やすために使われたとすれば、怒り心頭に発すのは当然である。「ウクライナ疲れ」どころの話ではない。ロシアとウクライナ、それは「狸と狐の化かし合い」である。ナイーブに狐(ウクライナ)の言うことのみを100%信じる日本人は情けない。これでは弱肉強食の世界で生き残れないだろう。
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