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2022-12-26 00:00
ロシアによるウクライナ“侵略”の「三面性」
日野 智貴
立憲民主党党員
ロシアは2014年3月にクリミアを、2022年10月にウクライナの東・南部の四州を、それぞれ「併合」しました。しかし、2014年に行われた「クリミア併合」と今年の「ドネツク・ルガンクス併合」及び「ヘルソン・ザボロジエ併合」の三者は、その正統性の度合いが全く異なります。ウクライナのゼレンスキー大統領は2022年の露宇戦争の結果併合された四州のみならず、2014年に併合されたクリミアの奪還も主張していますが、現状クリミア奪還は困難であり、日本を含む第三国が露宇戦争の仲介を行う際にはこの三地域を区別してロシアと交渉に当たるという手段があると考えます。
ロシアによるクリミア併合はクリミア自治共和国の議会が承認したものであり、親ロシア派とウクライナ残留派の間で武力衝突はあったものの、「民意」を得ていたと言えます。またクリミア自治共和国が一度独立してから併合したため、形式的にはウクライナへの侵略とはなりませんでした。無論、ウクライナはその前段のクリミア独立の段階で承認をしていませんから、ウクライナからすると「侵略」ではあります。しかしながら、ウクライナ時代に選挙された議会が独立に賛成したというのは大きいでしょう。同様の状況になっている地域として、合法的に選挙された州政府と州議会が独立を宣言したカタルーニャの例もあります。
ドネツクとルガンクスについては、形式上独立した数年たっていましたから、これもロシアによる侵略ではない、というのがロシア側のロジックです。しかしながら、こちらは既存の州政府を武力により親ロシア派勢力が打倒した訳ですから、正統性には疑問符が付きます。さらにヘルソン州とザボロジエ州に至っては、独立宣言の前に親ロシア派武装勢力により併合を問う住民投票が行われましたから、住民投票の正統性は皆無です。これらの地域の政府は、クリミアのようなウクライナ時代の統治機構からの連続性を確保している(つまり、正統性を継承している)政府とは異なるのです。
日本の政府やマスコミは現在、全面的にウクライナを支持しているように見えます。しかし、中国とインドと言う普段は仲の悪い両国が揃って中立を表明していることでも判るように、世界には中立の立場をとる国も少なくありません。また、ウクライナによるミサイルが他国に飛ばされた例もあったため、欧米もゼレンスキー大統領を全面的には信頼していない節があります。ウクライナ政府の公式Twitterが昭和天皇を侮辱した一件でも判るように、日本が一方的にウクライナの肩を持つことが国益に叶うかは疑問符があります。
私は露宇戦争において日本は局外中立を保つべきであると考えます。それはロシアによる侵略を容認するという意味ではありません。例えば、ロシアがもしヘルソン州とサポロジエ州とをウクライナに返還すれば経済制裁を緩和する、という風な提案をしてはどうでしょうか?クリミア奪還までウクライナを支持すると北方領土問題でも悪影響を及ぼす可能性が出てきますが、ヘルソン州とサポロジエ州の二州のみに留まればインドをはじめとする親日派の中立国も歩調を合わせてくれるかもしれません。無論、そのような交渉をしてもプーチン大統領は相手にしないでしょうが、ウクライナ側には「日本はロシア撤兵を求めて交渉している」、ロシア側には「日本は場合によっては経済制裁も緩和する」というメッセージになり、将来的な両国の停戦交渉の仲介がしやすくなるでしょう。
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