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2007-09-28 00:00
アジアの人達との仲間意識を育てよう
湯下博之
杏林大学客員教授
東アジア共同体構想が真剣に検討され、東アジア・サミットが毎年開かれる時代になった。かつては、日本にとってアジアと言えば、日本とアジアの個々の国との二国間の関係が主であったが、今やアジアという地域との関係を考えることが必要になっている。東アジア共同体といっても、ヨーロッパにおけるEU(欧州連合)のようなものが出来るとは考えにくいが、それでも、経済を中心として、何らかの地域組織が生まれるものと思われる。
そのような地域組織がうまく機能し、日本を含む構成各国にとって意義の大きいものになるためには、種々の要件が満たされる必要があるであろうが、最も基本的で重要な要件は、仲間意識の醸成であろうと思われる。即ち、共同体の構成国が自国の利益のことばかり考えていたのでは、うまく行かないことは言うに及ばずであるが、単に利害の調整を図るだけでも大きな成果は期待出来ない。やはり、共生或いは共存共栄を旨として相対利益を重視することが重要であり、そのためには、構成国の間に仲間意識が生まれることが必要と考えられる。
ところが、現状は、そのような状況から距離があり、指導的役割を果たすべき国である筈の日本についてみても、このままでは先が思いやられる。日本が余りにも内向きで、外の世界に目が向いていないという問題については、2006年8月9日に当政策掲示板において「『井の中の鯨』のままでよいのだろうか」と題して既に論じたとおりである。
さらに、私は20数年前にタイに在勤していた頃、日本人とタイ人の関係について、例えて言うと次のように感じた。即ち、日本人とタイ人は、いわば隣り合って座っているが、双方共遙かかなたの同一点を見ている。その同一点とは、欧米である。そして、はたと気がついて横を見てみると、お互いにすぐそばにいることが分る。しかし、向き合って、相手を見て話すという関係にはなっていない。タイ人にとって、日本についての情報源は、欧米の雑誌の『ニューズウィーク』であったりする。こういった状況は、明らかに不自然であり、もう少しお互いに向き合っての対話や、直接的な情報源が欲しいものである。
以上の話は20数年も前に私が感じていたことであるので、その後事情は変ったかも知れないと思っていたところ、数年前、日本で開かれた学者グループの会合で、上記のタイでの印象の話をしたところ、出席していた韓国の学者が、休憩時間に私に話しかけて来て、先程のタイと日本との関係についての話は、韓国と日本との関係についても同感ですと言われて驚いたことがある。やはり、アジア諸国とは、もっともっと向き合って話し合うことを心掛けねばならないと思う。そのためにも、アジアを単に「市場」として見るのでなく、隣人として、人間としての付合いをすることが必要と思われる。
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