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2022-12-03 00:00
いまロシアで起こっていること
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「ロシアの学校で、ウクライナ侵攻に疑問を呈したり、平和の大切さを訴えた教師が『裏切り者』『虚偽情報を教えた』などとして生徒や保護者から密告され、解雇されたり、罰金を科せられるケースが相次いでいる。プーチン政権の思想統制が一部の子どもたちにも浸透。冷戦時代の旧ソ連のような『密告社会』が復活する恐れも出ている」(2022/11/13東京新聞)。
この記事によれば、「事件」はサハリン州コルサコフ(旧日本名=大泊)の学校で起こった。10月17日、女性教師は英語の授業終了の3分前に、さまざまな国籍の子どもたちがロシアとウクライナの平和を願って歌うビデオを生徒たちに見せ「私たちが明るい未来を信じれば、世界はもっと優しくなる」と語りかけた、という。これに対して一部の生徒がビデオを見せた意図を教師に問いただし、その際の応えを録音し、それを聞いた保護者が学校に苦情を訴え、解雇が決まったという。同時に「教育現場における道徳と倫理に反する行為」があったとして、3万ルーブル(約4万5000円)の罰金を科す行政処分も言い渡された。教師は「生徒に平和の問題を考えてもらいたかっただけなのに」と嘆いたという。記事はこのほかにも同様の教室での教員の行動が官憲によって訴追され、禁錮15年の刑に処せられたという外電情報なども報道されている。ロシアは最早燃え盛るファシズムに侵されてしまっているらしい。
そういえば、ロシアの青年たちがロシア国内にはご法度の情報を国外に発表しているYouTube作品「ロシアの街角で聞きました」という、ロシア各地で採録した街頭インタビューを公開している。それによれば大都市モスクワの市民たちは、老人を除けば<国内秘>を安心の根拠にして率直に語っているように見える。その中で、ウクライナ戦争についての反応を見てみると若者たちに政府支援の発言が多く、中高年に反発が強い。さらに高齢者においてソ連回帰を望む意見などまで出てきて世代間の歴史観の違いの大きさが際立っているのが分かる。このインタビューは膨大で地方都市や少数民族地域まで足を延ばして取材しているのだが、その地域格差の大きさには驚くばかりである。田舎に行くほど、プーチン統治に対して満幅の信頼を持っていること、ウクライナに対する差別的感情など、一歩モスクワから外に出るとその思想的決裂や分断は驚異的ですらあるように見える。上のサハリンの話は、この格差の底辺側におちいっている一地方における思想・文化状況を端的に表しているのではないか、と思われる。
ナロードニキの残滓と近代が混在するプーチンのロシアはこれからどこへ行くのか。
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