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2022-10-27 00:00
後退するグローバル経済
岡本 裕明
海外事業経営者
バイデン大統領が中国への輸出規制強化を打ち出しています。これにより一部ハイテク企業に影響が出そうでただでさえ景気後退による需要減が見込まれる中、弱り目に祟り目になっています。一方、ロシアへの規制も厳しくなる一方でプーチン大統領はロシア産原油に対してキャップ(上限価格)をつけるならそれらの国にはもう売らない、と発言しています。これはつい5-10年前まで当たり前のように言われたグローバル経済と真逆の方向に進んでおり、個人的には国家の強権と傲慢さが世界経済を混乱に陥れることに深く懸念をしています。世界経済はG7に代表される先進国が長年リードしてきたものの80年代に「中進国」と称された韓国、シンガポール、台湾、香港がモノづくりを中心に進化を遂げ、2001年には中国がWTOに加盟して世界貿易の構図は完全に変わったといってよいでしょう。併せてメキシコやブラジル、インド、ベトナム、フィリピン、ポーランドなど新たな輸出国が次々と生まれ世界経済は平準化の道を辿ります。
2000年代初期から日本のアパレルは急速に中国製に代わり、今では日本製の服を見つけても高くて買えない、といった状態でどれだけ中国が嫌だと言いながらも中国製がないと我々の生活は成り立たないほどになっています。これはアパレルだけではありません。食品、家電から100均グッズまで幅広く我々は何の抵抗もなく海外製品を享受しています。これは単に安いだけではなく、日本人の求めるクオリティを満足させているからですが、そこには中国や諸外国製の品質向上だけではなく、3万数千社ともされる中国へ進出する日本企業が日本の消費者向けのクオリティや要求レベルを指導したり、教育している故の賜物なのです。例えばバンクーバーは映画撮影のメッカだということはあまり知られていないかもしれません。ハリウッドと時差がなく、距離も近いことがあり、映画産業が長年とても発達しており、ハリウッドノースともいわれています。しかし、それは単に人件費が安かっただけではありません。周辺産業が育ち、専門学校にはメディア、画像や音声関係のコースも多数あり、優秀な人材が育っているから映画、テレビドラマ、コマーシャルの撮影がしやすいのです。また、撮影場所もごく普通の街中で行われ、警察や市民の理解度が高いこともあります。
つまり長い時間をかけて産業は育成され、価値を生んでくるわけです。これがグローバル経済のメリットです。コールセンターは世界のどこにあるか今や皆目、見当がつきません。商品の問い合わせをしてもその電話はインドやオーストラリアのオペレーターだったりするわけで「ご住所は?」と聞かれどんな有名な地名や通りの名前を言ってもオペレーターから「スペルをお願いします」と言われたりするのです。もしもロシア、中国がブロック化を進め、G7が厳しい経済制裁や規制を継続するとそれらの蓄積されたノウハウは行き場を失い、価値が急激に遺棄していきます。例えば地産地消がこの20年のコンセプトで日本企業は現地進出し、現地に見合う製品開発をしてきたのですが、これも十分に機能しなくなります。アメリカでは自国での生産、製造を進めるべく政策を打ち出しますが、これは自由貿易の根幹を揺るがすもので評価できるものでありません。
結局、私の思うところは国家の政治や体制と経済が切り離せないどころか、経済を政治家の交渉ツールとして利用している点が問題なのだと考えています。例えばイランはなぜ原油を輸出できないか、と言えば体制であり、政治的問題が経済交流を封印しているからです。結局、指導者は地球規模の経済を自由に我儘に振り廻しているとも言えます。これがおかしいと世界中の人が思わなかったこと自体が不思議ではないでしょうか?政治家や国家指導者は政治の分野で他国とバトルをする一方、経済は独立したアンタッチャブルな聖域とすれば世界経済はより大きな飛躍を遂げられたかもしれません。もちろん、これは超理想論で個人情報が盗まれるような機材の貿易を許すのか、と言われればNOであるのですが、他に手段がないものか、国家指導者に勝手にルールを変更される現代社会が正しいのか、我々はもう少し知恵を絞ったほうが良い気がします。
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