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2022-10-14 00:00
党大会直前の中国
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
中国共産党は10月9日から12日まで、第19期中央委員会第7回全体会議(第19期7中総会、以下「7中総会」と略)を開催し、第20回全国代表大会(党大会)を16日から開くことを決定した。また、7中総会のコミュニケによると、習近平総書記が行う党大会における政治報告、第19期規律検査委員会の活動報告、及び中国共産党規約修正案の3つの文献を聴取・審議して党大会の審査と審議にかけることも決定した。さらに、12日には党大会専用のプレスセンターが開設されて内外記者への情報公開が行われ、党大会への準備は着実に行われているかにみえた。しかし、7中総会開催中から党機関紙「人民日報」に署名論文が連日掲載され、注目されていた。以下、細部をみていこう。
7中総会開幕翌日の10月10日、「人民日報」第2面には「当面の防疫政策への自信と忍耐を増強しよう」と題する「仲音」署名論文が掲載された。翌11日にも「人民日報」は、第2面に「仲音」署名の「ゼロコロナ(中国語:動態清零)は持続可能であり、かつ堅持しなければならない」という論文を掲載した。これら論文に一貫する論調は、習近平総書記が自ら「堅持」を主張した「ゼロコロナ」防疫政策の有効性と継続性であった。そして、「仲音」論文は12日にも3日連続で「人民日報」第2面に掲載され、「寝転んで過ごすような政策はとれないし、寝転んで勝利するのは不可能である」と主張した。これは前2回の論文の論調とは若干異なり、日本や米国の防疫政策を、中国社会で話題になった「寝転び生活」と揶揄し、これは「出口がなく、消極的な防疫政策の結果は酷かった」と指摘した。したがって、その教訓から「ただ寝転んで勝利するのは不可能」だから「ゼロコロナの堅持こそ、防疫失敗によって作り出される巨大な損失を最大限回避できる」と主張したのである。このような論文が、3日連続で党機関紙「人民日報」に掲載されたことに接して小生は、「セロコロナ」政策等をめぐって7中総会で何らかの論争、意見対立が生起しており、党大会関係者、特に宣伝部門が敢えてリークした可能性が高いと感じた。
そんな中、7中総会閉幕翌日の10月13日、米CNNは「中国の首都北京で習近平国家主席とその政策に対する異例の抗議活動が展開された」とする報道を行った。14日のCNN文書配信によると、「ツイッターで13日午後に出回った写真には、北京北西部の大通りをまたぐ高架橋に掲げられた2つの横断幕が映っていた」とされ、「横断幕のうち1つには『コロナ検査を拒絶し、食料を肯定しよう。ロックダウンを拒絶し、自由を肯定しよう。うそを拒絶し、尊厳を肯定しよう。文化(大)革命を拒絶し、革命を肯定しよう。偉大な指導者(領袖)を拒絶し、投票を肯定しよう。奴隷になるな、市民になれ』との内容が書かれ、もう1枚には『スト決行を。独裁者で国家の裏切り者、習近平の排除を』という内容が書かれていた」という。13日付の邦字紙「毎日新聞」の配信によると、「反習近平」を訴える横断幕が現れた場所は「中国人民大学キャンパスに近く、周辺には北京大学や清華大学など中国有数の大学・研究機関があるエリア」とされ、小生が観たCNN映像では北京市海淀区の公道に架かる「四通橋」だったことが確認された。さらに、これら映像では橋から煙が上がる様子や、拡声器から流れる抗議のスローガン(内容不分明)もあった。しかし、党大会開幕を控えた緊要な時機に厳戒態勢がとられている首都の北京市内で、このような抗議活動が確認されたことは極めて異例であり、習近平ら中国指導部にとって冷水を浴びせられたような異常事態ではないか。
前回9月3日付の拙稿で小生は、「中国共産党の習近平総書記は、要職の人事で腹心や側近を集めており、その権力基盤は一見盤石にみえるが、実態は依然として『内憂』ではないだろうか」と述べたが、今回の一連の事象に接して、その思いを一層強くした。「外患」の方でも、ロシアのウクライナ侵攻は依然として継続され、台湾問題などをめぐる米中関係の緊張も存在し、中国にとって平和で、かつ有利な国際環境下での党大会開催も不可能となった。この「内憂外患」こもごも至る時期、中国共産党は10月15日、党大会を仕切る主席団や秘書長を選出する予備会議を開いて恐らく日程・議案を採択して初の記者会見を開催し、翌16日から第20回党大会を開催するが政策方針と要人人事が注目される。
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