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2022-09-30 00:00
軍需産業の拡大について
真田 幸光
大学教員
私は最近の世界経済を見ていると、特に消費財も社会に行き渡り社会インフラも一定程度整い、リハビリの需要が中心となっている先進国では新たな強い需要がありません。安定成長と言う名の低成長になることは言ってみれば必然であり、強い経済成長の原動力が弱い状態となっていると見ています。従って、米国などを中心に、消費者の欲望をくすぐるアプローチがちやほやされています。例えば人々の関心が高い「アンチエージング」などを題材に若返りますよと言わんばかりに消費者の欲望をくすぐりながらモノやサービスを売っていくビジネスモデルです。更に、消費者にお金がないとものやサービスは買ってもらえませんが、そのお金を消費者に与える為に「人々に借金をさせて消費をさせる」というビジネスモデルまで構築されています。最近ではクレジットカードに続いて、更に信用力の低い消費者に対してBNPL(Buy Now, Pay Later今買って後で支払う)などといった仕組みまで作り、更なる消費刺激が行われています。
私にとっては、これは大量生産・大量消費、そして大量廃棄に繋がるため地球に負荷を与えるビジネスモデルであり、厳に調整していくべき状況であると感じられます。しかし、世界では更に輪をかけるように、「壊して、自然に、そして人工的に需要を作る」といった動きが垣間見られるようになってきていると思います。即ち、自然災害の発生によって壊された社会を再構築する為の需要、これに続いて、人工的に壊す、即ち、戦争やテロによって壊して作るといった形で、新たな需要が刺激される動きが見られています。この考え方の上に立って、最近じわじわと拡大している産業が、「防衛産業」と言う名前の軍需産業ではないかと私は危惧しています。
そして、軍需産業の活発な動きは先進国だけでなく、隣の国、韓国でも見られ始めています。韓国政府は朴元政権時代から、防衛産業を韓国の有望成長産業として国家が認識し後押しをしてきています。今年初めには例えば、文在寅前大統領がアラブ首長国連邦(UAE)・サウジアラビア・エジプトの3カ国訪問をおこないました。北朝鮮による挑発行為や新型コロナウイルス感染症の流行など韓国国内の状況が悪かったにも拘らずです。任期終盤の海外訪問の一つの大きな目的には、韓国・エジプト間のK-9自走砲の契約妥結があったとされています。
この際、韓国・エジプト両国は訪問の最終日まで交渉を行ったものの、見解の違いがあり条件を縮めることはできなかった訳ですが、韓国のみならず世界的に見てもこうした防衛産業と言う名前の軍需産業拡大の動きは今後も更に拡大してくるように思えてなりません。私にとっては大いに危惧される状況であります。
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