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2022-09-03 00:00
中国、党大会前に人事異動を加速かー中国の「内憂外患」三論
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
中国の第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第36回会議は9月2日に閉幕し、国務院(政府)応急管理部長の黄明を更迭し、新しい部長に王祥喜を任命した。また、この3月まで湖北省党委員会書記であった応勇・全人代憲法法律委員会副主任委員を最高人民検察院副検察長・検察委員会委員に任命した。先月8月30日、中国共産党は政治局会議を開催し、第20回全国代表大会(党大会)を10月16日に開催することを決定しており、その前に党・政府・軍の人事異動が加速していく模様である。以下、今回の人事異動の注目点をみていこう。
今回の応急管理部長人事に関しては先ず、党委員会人事が行われた。7月29日、党中央組織部責任者は応急管理部指導幹部会議に出席し、王祥喜を応急管理部党委員会書記に任命し、黄明部長を同書記から解任した。前書記の黄明は、2018年3月の応急管理部新設当初から書記を務め、公安部副部長から異動し応急管理部筆頭副部長として部長の王玉晋(病弱で2020年12月に逝去)を支えていた。王部長の逝去を受けて2021年4月に応急管理部長に就任し、今回の人事措置によってわずか1年4か月の任期となったが、本年65歳であり「定年」を迎えた可能性がある。一方、新たに部長となった王祥喜は1962年8月生まれの60歳、湖北省における勤務が長く2017年からは同省政法委員会書記を務めていた。それが2019年には一転、国家エネルギー投資集団会社会長(同党組書記)に異動し、3年間の勤務を経て王玉晋、黄明に続く第3代応急管理部長の職務に就いた。しかし、「新参者」として危機管理部門のトップとなった王祥喜の行動は素早かった。8月1日、応急管理部を訪れた王勇・国務委員兼国家防災総指揮(防災担当司令官)を接遇すると、18日からは国家防災副総指揮(防災担当副司令官)として大規模な山津波が発生した青海省西寧市へ現地入りし、19日まで防災チームを指揮している。小生が、処女作に始まる過去の拙稿で倦まず指摘してきたように、「中国版FEMA」と喧伝されて危機管理の司令塔の役割を期待されながら、新型コロナ対策等に全く寄与してない応急管理部は「解体」の可能性もあると考えていたが、今回のトップ交代で「延命」再編される芽が出てきたかもしれないとみる。そして、応急管理部人事に関連して浮上したのが政法部門のベテラン幹部であった応勇の最高検察院入りであった。
話は少し遡るが、2021年11月、国務院(政府)公安部は、今回の応急管理部人事に先行し、王小洪・筆頭副部長を党委員会書記に任命し、趙克志部長を同書記から解任していた。そして本年6月24日、王小洪は新たな公安部長に任命され、趙部長は解任された。王小洪は本年65歳になるが、福建省勤務時代から「習近平一派」とされる腹心の幹部であり、趙克志に代わって政法委員会副書記に就任していることも確認された。ここで応勇の最高検察院副検察長への任命との関連なのである。王小洪と同じく本年65歳になる応勇は、浙江省の末端の派出所勤務から一貫して政法部門に勤務し、同省の公安庁副庁長、人民法院院長を務めて当時の省トップである習近平の知己を得た。そして、2020年2月、上海市長(同市党委員会副書記)だった応勇は、新型コロナ禍で危機状態にあった湖北省党委員会書記に任命された「習近平一派」である。その応勇は、現職の張軍に代わって最高検察院検察長に就くとの観測があり、そうなると政法委員会は「習近平一派」で固められる可能性が高く、今後、政法委員会書記を務める郭生昆(68歳、元公安部長で引退の可能性大)の動静、同委員を兼務する秘書長(事務局長)、最高人民法院院長、国家安全部長、司法部長等の人事が注目されよう。
最後に、中国共産党の習近平総書記は、要職の人事で腹心や側近を集めており、その権力基盤は一見盤石にみえるが、実態は依然として「内憂」ではないだろうか。そもそも2012年以来10年間、あれだけ熾烈な権力闘争を行いながら「政権の屋台骨」となる肝心の政法部門が固められず不安定なのである。そう考えて来ると今回、応急管理部長に抜擢された王祥喜も政法系統出身であり、習総書記の悩み、憂いはは尽きないのかもしれない。
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