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2022-08-19 00:00
米国中間層の危機
大井 幸子
国際金融アナリスト
米国ではトランプ大統領のもとで中間層や小規模事業主に対して大型減税が実施されました。オバマ時代に重税で疲弊していた中間層がこの時元気を取り戻しました。が、その後はコロナショックと2021年の大統領選挙の不正と政治的な混乱を経て、2021年バイデン政権の発足以来、エネルギー価格(特にガソリン価格)が高騰し、食料価格の上昇、金利上昇で、今、米国の中間者層は力を失いつつあります。
ウォールストリート紙(7月25日付)記事 ”The Upper Middle Class is getting Squeezed”(「中の上」階層が押しつぶされる)は、最も購買力が旺盛で貯蓄率が高いはずの広範な中間層の上層部(上位20%の高所得者層)が疲弊している様子を伝えています。記事で引用されているムーディーズ社のレポートによると、米国の所得世帯層は6つに分けられ、緑色で示した75,301-127,300ドル(世帯年収約980万円〜1,655万円)が「中の上」です。そして、2020年第1四半期から2022年第1四半期までのコロナ禍で、それぞれの所得層の貯蓄額が棒グラフで示してあります。
この2年間は、政府からの支給金や失業手当などが支払われ、同時に、8-9%ものインフレが進行した時期であります。所得の最も高い層は借金も少なく、貯蓄額も大きいです。米国では上位10%が株式の90%を保有していると言われています。彼らは次の景気後退期も乗り越えていくだろうと予想されます。ところが、中の上の層ではクレジットカード負債額が大きく、貯蓄額が減っています。なぜか?個人の年収が9万9000ドル以上の人は、政府からの支給金を減らされ、また、児童税額控除が受けられないといったデメリットがありました。また、年初からの株価下落で、401(k)などの個人資産が目減りしています。年金積立が足りなくなり、リタイヤメントを先延ばしして働き続ける人たちも増えています。
今年年末から来年前半まで、FRBはインフレを抑制しようと利上げと引き締めを継続するとみられます。その間、企業では雇用調整が行われ、失業が増えると見込まれます。インフレと失業、そして、総需要が縮こまるなど景気は弱いです。米国経済を支えてきた広範な中間者層の個人消費の落ち込みが懸念されます。
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