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2022-08-09 00:00
ジレンマに陥いった中台関係
楊 富成
厦門大学台湾研究院・博士
2015年11月7日、世界各国のメディアにとって大きなヘッドラインニュースはシンガポールで行われた中国国家主席・習近平と台湾総統・馬英九の会談に違いないだろう。これは中華人民共和国が成立した1949年および蒋介石政権が台湾に移転して以来、中台関係歴史の中で史上初回の両側政府トップレベル会談である。1949年の中台分断後、66年ぶりの直接会談は新しい歴史を残したとされている。「習馬会」や「馬習会」とそれぞれ呼ばれる初のトップリーダー会談である。双方のリーダーは互いに「Mr.習」(習先生)と「Mr.馬」(馬先生)を呼び合った。当日現場のあり方を見てみると、習近平は赤いネクタイ、馬英九は青いネクタイを締めて現れ、二人とも満面の笑みで80秒ほどの握手を世界にしてみせた。66年の時空を乗り越えた握手と呼ばれる。シンガポールホテルの会談現場に世界各国から押し寄せた大勢のメディアらは笑顔で握手を交わした様子を盛んに報道していたということがわかる。今日、習氏と馬氏の握手する様子を中国側の歴史教科書の中に掲載されることがわかる。
しかしながら、2016年5月から民進党・蔡英文氏は台湾総統に就任して以来、ずっと中国側に猛反発を招かれている。さらに、2022年8月3日に、アメリカ衆議院議長ペロシの台湾訪問に伴い、中国側は反撃の手段として台湾周辺の海域を包囲し、軍事演習を行っていた。しかも、日本側によると、その弾道ミサイルを発射し一部は日本の排他的経済水域内に落下したことがわかる。ただいま、中台関係は瀬戸際に立っていると言えよう。前述のように、中台間のトップリーダーは直接会談を実現したが、なぜ今日の危険な状況は引き起ったのか。
前述した馬英九は2008年より台湾総統に就任し、中国側と共に「九二コンセンサス」への堅持を呼びかけて中台関係を改善すると重視する。習・馬は会談の中で、習近平は「九二コンセンサス」を重要な理由として、その中身が一つの中国原則を体現しているからであり、いかなる党派、団体でも過去の主張に関係なく、「九二コンセンサス」の歴史事実を認めてその核心的価値を賛同すれば、両岸往来が可能になり、喜ばしいからだと強調した。だが、現総統である蔡英文は就任して以来、ずっと「九二コンセンサス」を正式に認めていない。故に、中台政府間の政治コンセンサスが存在していないのは現状である。
さて、蔡英文総統などが「九二コンセンサス」に対する認識は果たして何だろうか。台湾社会におけるイデオロギーが多くても二つ分かれている。一つは「中華民国」の主張、もう一つは「台湾独立」である。蔡英文を始めとする「台湾独立」派にとっては、「一つの中国」だけ強調すれば、一般的な国際認識により、「中華人民共和国」のことを指すと考えられる。要するに、台湾の国家尊厳は「中華民国」の不存在を黙認しながら、習・馬会談を通じて馬英九によって、無に帰された。そして、習・馬会談は台湾側にとって、不対等なものであった。これにより、蔡氏は今でも中国側に敵意を持たれている。双方の公的な交流は完全に停滞している。さらに、2019年-2020年香港民主化デモによる影響を受け、台湾人は徐々に中国を信頼しなくなってきた。台湾社会の全体は「九二コンセンサス」=香港の「い一国二制度」、中国と協力すれば、今日の香港=明日の台湾などといった悪いイメージを形成しかねない。中国に対する不信より、むしろ台湾人は大勢中国の行動を恐れているだろう。中国側は「九二コンセンサス」に絶え間なく固執しているにもかかわらず、中台間における「九二コンセンサス」の認識はすでにずれている。
今回のペロシ下院議長の台湾訪問に際し、中国側は事前にも事後にも大きな反応を示した。特に中国の軍事行動による「副作用」である。このような「副作用」により、台湾の人々が恐らく民族・階級などを問わず、もっと結束を固めるはずである。中国によった軍事演習は第三次台湾海峡危機(1995年-1996年)を引き起こした。結局、当時の台湾内部はみんな一致団結になっていた。今回の軍事演習を第四次台湾海峡危機ともされている。目下の観察によると、依然として、台湾の社会全体は極めて平気で、平日のように動いていり、全く軍事威嚇を恐れていない様子である。それにしても、多数の専門家は、中国側は今回の軍事演習はその一部を取り上げて,実戦的な訓練としてやっていると見るべきだと考えている。筆者からみれば、確かに中国内部には政府でも普通の民衆でもナショナリズムが高まっている。平和統一の意見はどんどん消えていった。台湾を武力で統一する意見はすでに主流派になっている。にもかかわらず、中国側であれ、台湾側であれ、戦争になるか否か中台間における「変量」の要素次第である。例えば、台湾の2024総統選挙は果たして「台湾独立」派が政権を続けるか。仮に「九二コンセンサス」を認めた「中華民国」派を代表する国民党は2024総統選挙に勝てば、事態はまた変化するだろう。中国にとって、武力で台湾を屈服させるのは危険を冒すことでもある。今後、中台間におけるホットラインを結ぶのは重要視されるべきである。もしくはアメリカ側は今回の事件を機会として中台間の斡旋をとるべきである。こうしたら、せめて双方の誤った軍事判断を避けられるだろう。
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