ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2022-08-01 00:00
(連載1)緩衝通貨としての円:通貨政策で問われる国家観
大井 幸子
国際金融アナリスト
このところの急激な円安や乱高下で、通貨について思いを巡らせています。「経済大国」と称された日本も経済が今後10-20年間も衰退し続ければ、ウクライナと同様に大国に挟まれた一緩衝国家として世界秩序の中に置かれるでしょうし、日本円も米ドルと人民元の間に挟まれた「緩衝通貨」の地位に転落するだろうと、私は危機感を持っています。
通貨について、通貨が流通するためには、発行体である地域あるいは国家が、自立した経済と自治権を確立している必要があります。特定の地域通貨、あるいは国の通貨が流通するためには、経済が活発に運営されて社会が繁栄しているのは必要条件で、加えて自分の身は自分で守れるという意味での安全保障が担保されていることが十分条件です。この必要十分が揃わなければ、通貨は自国以外に対して十分な信用力を発揮できません。
歴史上、これまで様々な通貨が発行され流通してきました。特に、中世都市では自治権の確立と通貨の信用力は一体化していました。以前、私は奈良県橿原市今井町を訪れたことがあります。織田信長の時代、貿易で栄えた今井町は一向宗の共同体が団結し、織田軍に抵抗しました。そして、織田信長は今井町を尊重し、自治権を与えました。今井町には今でも当時の誇り高い自治都市の面影が保存されています。今井町は独自の裁判権を持ち、町の中に牢獄や裁判所があります。その裏には武器倉庫があり、外敵が攻めてきたら町の人は武器を取って戦いました。また、独自の通貨も発行していました。
このように、自治の確立は、専制的な支配権力からの解放という意味もあります。私は、2018年にアントワープを訪ねました。写真はアントワープ市庁舎前の勇者ブラボーの銅像です。1400年頃にアントワープは貿易都市として繁栄しました。しかしスヘルデ川の通行料などブルゴーニュ公国への高い税金を納めなければならず、応じない船主や船乗りは右手を切り落とされたと言われます。(つづく)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム