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2022-07-27 00:00
(連載2)ウクライナ危機の間接的損害の補償過程
倉西 雅子
政治学者
もっとも、ウクライナによるロシア資産強制没収案も、国際法において根拠があるわけではなく、むしろ、一方的な実力行使の側面があります。となりますと、合法的にロシアに賠償を請求しようとするならば、先ずもって、今般のウクライナ危機について中立・公平な立場からの検証し、ロシア側の有責性を確定させる必要がありましょう。つまり、国際レベルにおける検察活動が行われ、かつ、裁判手続きを経なければ、ウクライナ側の強制没収には合法性が生じないのです。ロシアの罪状が確定しない状態での資産没収は、ロシア側からすれば‘略奪’と見なされかねないリスクさえあります。
しかも、ウクライナ側には、ネオ・ナチとして批判されてきたアゾフ連隊という‘脛の傷’があります。ウクライナ危機に先立って、既に内戦状態にあった東部地域で何が起きていたのか、その事実確認なくして今般の危機を論じることも、真相を解明することも困難です。騒擾の最中で同連隊によるロシア系住民の迫害やロシアに対する挑発行為があったとすれば、ロシアのみに100%の責任があるとは言い切れなくなります。
戦勝国となろうが、敗戦国となろうが、ウクライナ並びにその支援国も、合法的にロシア資産を没収するためには、国際法廷にあって自らの無実を証明する必要がありましょう。たとえウクライナが敗戦国となったとしても、ロシアに対する国際法上の損害賠償権を保持することはできます。国際司法機関の決定があれば、これを根拠として、ロシア資産を没収することもできます。もっとも。仮に、国際法廷においてアゾフ連隊等の行為が問題視されれば、あるいは‘和解勧告’が出されるかもしれません。ウクライナにも責任があるとの判断が下されれば、同国は、自国に協力して対ロ制裁を実施した結果、ロシアの逆制裁により損害を受けた諸国に対する賠償、あるいは、補償責任が生じるかもしれないのです。
国際社会において起きる出来事については、何事も、両当時国の歴史に遡り時系列的に順序だてて双方の行為について事実を確認し、複雑に絡み合う要素を整理し、そして、表に見える現象の裏側までをもよく調べて判断する必要がありましょう。ウクライナ危機における復興資金や賠償の問題も、厳正な事実確認をいたしませんと、事態をさらに混乱させる要因にもなりましょう。そして、’賠償や補償に関する問題が人々の意識の表面に上るほどに、紛争や戦争に伴うコスト、並びに、その責任や負担の重さに慄くことになるかもしれません。願わくば、天文学的な数字となるコストや負担が戦争の抑止力となりますように。(おわり)
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