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2022-07-26 00:00
(連載1)ウクライナ危機の間接的損害の補償過程
倉西 雅子
政治学者
今般、スイスで開催されたウクライナ復興会議における主要課題は、もちろん、ウクライナの戦後復興でした。ロシア軍の爆撃等により国土が破壊されたのですから、ウクライナの復興が議題となるのは当然のことなのですが、ウクライナ危機によって生じた被害や損害は、ウクライナ一国に留まるものではありません。実のところ、間接的ながら、日本国をはじめ全世界が甚大なる損害を被っていると言えましょう。
ウクライナ危機によって、全世界の諸国はエネルギー資源並びに穀物価格の上昇に見舞われ、連鎖的な物価高や電力不足等に直面しています。政府による対策費の支出も、相当の額に上ります。また、ウクライナの要請に応え、いち早く米欧諸国と足並みを揃えて対ロ制裁に踏み切った日本国も、石油・天然ガスの国際開発プロジェクトであるサハリン2の権益がロシアによって一方的に接収される危機に直面しています。こうした間接的、かつ、広範な被害は膨大な額に上り、それば、ウクライナ復興に必要とされる100兆円を遥かに越えるものと予測されるのです。
それでは、全世界の諸国が受けた被害や損害は、一体、誰が賠償、あるいは、補償するのでしょうか。誰もが償わないとなりますと、被害や損害を受けた側は’泣き寝入り’ということになります。それでは、国家間の賠償や補償の請求が可能かと申しますと、今日の国際社会を見ますと、司法制度が未熟な状態にあり損害賠償訴訟の手続きを定める国際訴訟法も国内法のレベルにはほど遠い状態にありますので、ウクライナ危機を原因とする賠償や補償については、明確に可能とも不可能とも断言できないのです。
その一方で、上述した復興会議では、ウクライナは、ロシアの凍結資産の没収を以って復興費に充てるとする案を提起しています。この案に従えば、ロシア制裁に参加して損害を被った諸国は、自国において生じた損害を同様の手段で回収することができることとなります。否、復興資金として当事国であるウクライナに提供するよりも、率先して自国の損害に充てようとする国の方が多いかもしれません。何れにしても、双方が制裁を強化すればするほど、あるいは、長期化すればするほど、賠償や補償の額も膨大となるのです。(つづく)
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