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2007-09-23 00:00
米下院決議と国連決議
佐島直子
専修大学教授
9月5日、米国下院議会は「日米安全保障同盟に関する下院決議案508号」を採択した。この決議では、日本のアジア太平洋地域の安定向上に果たす役割や「テロとの闘い」における貢献に対して、真摯な感謝が表明されている。
また9月19日、国連安全保障理事会は、10月半ばに期限切れを迎えるアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の任務を延長する決議を賛成14、棄権1(ロシア)で採択した。この決議は「ISAFと不朽の自由作戦(OEF)を含む国際社会の支援を支持」し、両者の「継続的な国際努力の必要性」を強調したものである。前文で、日本の海上自衛隊がインド洋での給油活動を通じて参加している多国籍軍による海上阻止活動など、各国の貢献に対して「謝意」が表明されている。
しかしながら、前者の下院決議に対しては、同じ下院がつい二ヶ月前に決議した「慰安婦問題に関する対日非難」に、連日大騒ぎをした日本のマスコミや識者はほとんど黙殺をしている。後者の国連決議についても、日本の論調は否定的である。「国連決議に基づく活動に対しては、自衛隊を派遣する余地がある」(小沢一郎代表)という原則論を掲げていた民主党も、決議採択後は「必要条件であって十分条件とは思っていない」(鳩山由紀夫幹事長)とトーンを変えた。
日本の外交政策は、日本の民意に依拠した日本の政治プロセスから策定されるのであるから、米国や国連など関係ないのであろう(皮肉です。)もちろん、米国の決議は米国の内政の一部であり、日本の政策と直結する必要はない。そもそも、国連の決議は加盟国の国益のせめぎあいの帰結であって、「正義」とは無縁なのであるから真に受ける必要はない。
今回の国連決議の前文にしても、反発したロシアが棄権し、2001年のISAF発足以降、国連安保理が毎年採択してきた延長決議で初めて全会一致が崩れている。チュルキン・ロシア国連大使は「(OEFの活動は)国連の枠外で行われているものだ」と反発の理由を述べ、「決議は国連の特定の加盟国の国内事情を優先させた結果、採択された」と批判したが、これもこの種の決議が国連を舞台にした外交駆け引きの一部であることを露呈している。
日本の「国益」は、日本が自らのやり方で追求するのが国際政治の現実ではある。しかし、それならば「米国の威信」や「国連の大義」を金科玉条のごとく押し頂いてきた自称「専門家」はどこへ消えたのだろうか?いつのまに、唯我独尊外交を支持することになったのだろうか?
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