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2022-07-21 00:00
(連載1)捨て駒としての緩衝国家と日本の今後
大井 幸子
国際金融アナリスト
安倍元首相が銃殺され、「大変な時代になった」と暗い時代の予感を感じている方は多いと思います。私はご本人と3回ほどお会いしお話ししたことがありますが、本当に無念というか、心よりお悔やみを申し上げます。
今私は、『朝鮮銀行:ある円通貨圏の滅亡』(多田井喜生著、ちくま文庫 2020年)を読んでいます。この本では、安倍元首相の祖父、岸信介氏が深く関わった満州国建設に至る過程で、円通貨が朝鮮銀行を通して、中国大陸に侵攻していく様相が詳しく記されています。著者の多田井喜生氏は、現代史資料『占領地通貨工作』、『阿片問題』(みすず書房)で経済・通貨史の第一級の仕事をされています。満州国がどのように戦費を調達してきたか、そして第2次大戦の敗北でどのように通貨と共に崩壊していったか、その過程が一次資料から丹念に分析されています。
そして、満州国の利権に関わった人脈は戦後の自民党へつながっていったのですが、どうも、安倍元首相の暗殺によってこの連続性が断ち切られたのではないかという気がするのです。その理由は、日本が「経済大国」の地位から滑り落ち、米・中・ロシアの大国に囲まれた一緩衝国家に成り果てたという実相にあると思います。
「失われた30年」と言われながら、なぜ日本政府はこの厳しい現実を直視し、経済大国の地位を守ることができなかったのか。「経済大国」だった日本は、近隣の韓国や中国に対してある程度の抑止力がありました。が、アベノミクス失速後、中国や韓国は日本経済がさらに弱体化していくと舐めてかかっています。外交上も対日強硬派が挑発的な態度を強めるでしょう。(つづく)
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