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2022-06-23 00:00
(連載1)ウクライナ侵攻と世界的インフレについて
真田 幸光
大学教員
昨年秋以降、原油価格の上昇を背景として、「インフレ懸念」が国際金融市場では指摘されていたが、国際金融筋は「2022年春以降は石油生産も安定化する一方、春の訪れと共に原油の需要も落ち着き、世界的なインフレは落ち着くであろう」とインフレに対する警戒はしつつも、厳しい見方はしていなかった。従って、昨年末には、「インフレ退治として出動する政策金利の引き上げも、米国を中心とする各国政府は、様子を見ながら、実施してくるであろう」との予測が支配的であった。しかし、ご高尚の通り、今年の二月に始まった、「ロシアのウクライナ侵攻」からこうした潮目は明らかに変わった。先ず、申し上げたいのは、「戦争発生はインフレに繋がる」ということである。戦争により、ものの生産(供給)が妨げられる一方、少なくとも人々が生きていく為の最低限のものに対する需要は変わらない、そして戦争に必要な物資の需要はむしろ高まる。よって、需給関係の乱れから、インフレが発生する。これは、必然であり、ウクライナやロシア発でインフレが起こることは仕方がないことである。
そして更に、今回、戦場となっている、ウクライナとロシアは、「世界の人々が生きる為に必要なもの」の一部を産出、供給している、例えば、エネルギー源としての石油や天然ガス、食糧としての小麦や食用油、原材料としてもニッケルや白金、工業用ガスなどを産出、提供している地域であることから、その供給の乱れは、世界の人々の生きていく為に必要にものの不足に繋がっていく。その結果として、インフレは戦争当事国であるウクライナやロシアに留まらず、世界各地で顕在化しているのが今の状態であろう。問題は、こうした状況を受けて、資金余剰の「黒字主体」の人々が、「資源や食糧の価格は当面、上昇するであろう」と考え始めると、その資金余剰があるが故に、「資源や食糧がまだまだ安いうちに、これらを買い占めて、値段が更に上がるのを待ち、値段が下がり始める直前に売り切り、儲けよう」とする、所謂、「投機性の資金の動き」も顕在化して、価格上昇に拍車を掛ける。こう見られているのが今の国際金融情勢である。
よって、政策金利も上がり、それがまた、基軸通貨・米ドルとその他通貨の為替レートにも反映し、国際商品の多くの米ドル建て価格が上昇する。そして、米国以外の国で米ドルに対して自国通貨が下落すると、為替レートから自国通貨立ててでは値段が高くなるという、「輸入インフレ」が追い打ちをかける。そうした国のインフレはより一層深刻なものとなる。正に、今の日本はそうした状態にある。こうしたことから、「現行の世界的なインフレ」の主たる背景とはロシアのウクライナ侵攻にあると言っても過言ではなかろう。そして、当面は、ロシア・ウクライナ情勢が、世界的なインフレの主犯であるとも言えると筆者は考える。
しかし、その主たる原因が、「戦争」であれば、その戦争が収束の方向に向かい始めれば、上述したように、先ずは投機性の資金が、ものの市場から逃げ出し、インフレは沈静化を始める。そして、戦争収束が確実視されれば、復興に伴う生産も回復、復興需要以外の需給関係も落ち着き始め、世界的なインフレは落ち着き始めると考えられており、早期戦争収束を意識する向きからは、ロシア・ウクライナ情勢は、「一時的な世界的インフレ要因である」との見方も出てきている。一つの論理的な見方である。そして、早期のロシア・ウクライナ情勢収束を前提とすれば、それは世界的なインフレの鎮静化にも繋がる。それによって、「早期の政策金利引き上げの必要性も薄らぎ、当面は様子を見るべきであろう」との考え方にも至る。多分、日本の中央銀行である日本銀行もこうした見方を基本の一つに組み入れ、日本の政策金利の引き上げには、「慎重な姿勢」を示しているのではないかと筆者は見ている。論理的な見方ではある。(つづく)
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