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2022-06-15 00:00
(連載2)地政学的思考から見る中小諸国
倉西 雅子
政治学者
第四として指摘し得るのは、大国間のパワー・ゲームは、大国とその勢力圏に属する中小諸国のみならず、中小諸国間の関係をも左右してしまう点です。ローマ帝国以来の’分割して統治せよ’の方針からすれば、中小国諸間の団結は常に大国によって意図的に妨げられることとなります。その一方で、’敵対勢力’の脅威をアピールしたいときには、国民感情としては友好的ではない国同士であっても、’仲良しのふり’を強要されてしまうのです。
そして、第5の問題点は、中小諸国の能力もコントロールされてしまう点です。中小諸国は、テクノロジーや知識、あるいは、知力においても大国に優ることは構造上不可能に近くなります。中小諸国は、軍事面のみならず、経済面を含むあらゆる側面において大国の脅威であってはならないから、出る杭はあくまで「友好的に」打たれる形になります。唯一、能力を伸ばすことが許されるとすれば、それは、大国に貢献する場合に限られます。優秀な人材は中小諸国から大国へと流出し、産業は伸び悩むのです。
地政学の理論からしますと、パワー・ゲームの行く先には、世界支配に到達するための第3次世界大戦が待っていることは、昨日の記事で述べたところです。その一方で、第3次世界大戦というステップの有無に拘わらず、勢力間の分割統治を演出するというシナリオも考えられましょう。これは、オーウェルの描いた『1984年』のモデルともなるのですが、何れにしましても、大国間のパワー・ゲーム、並びに、それを背景とした世界支配は、中小諸国にとりましては、被支配的な地位の固定化を意味してしまうのです(大国には盟主の地位が保障されているので、相応のメリットはある…)。
以上に述べたことから、地政学が描くパワー・ゲームとその背景にある世界支配の思想と、国民国家体系、即ち、民族自決(民主主義)、主権平等、内政不干渉等の原則を基礎とする国際体系との間に深刻な不整合性、否、二律背反性があることが分かります。そして、この二律背反性は、’どちらかを選ぶべきか’という未来の方向性に関する選択を人類に迫ることとなりましょう。同選択については、法というものがその本質において各自の権利や自由を保護する役割を果たす以上、国際法秩序の観点からしても、後者しかありえないのではないかと思うのです。(おわり)
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