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2022-06-15 00:00
グローバル・クライシス
池尾 愛子
早稲田大学教授
世界レベルでの危機が進行している。先進国ではインフレーションが顕著になる一方、途上国では、エネルギー危機、食糧危機、債務危機が進行しつつあるといえそうである。南アジアのスリランカは2019年頃から危機が予想されていたのだが、特別の対策なく、今年2022年4月から一部の国債の利払いが滞る「選択的デフォルト」状態に陥っている。世界貿易機関(WTO)は4-5年ぶりで閣僚会議の対面での開催を始めている。ウクライナ侵攻の制裁のために輸入制限が行われる一方、ロシアやインドが小麦輸出を制限していることが伝えられており、加盟国の多いWTO会議の動向は注目されている。
2020年初頭に警戒され始めた新型コロナ(COVID―19)は、感染力の強い変異株が生まれるたびに人流が制限されることにつながり、経済活動にも影響を及ぼしてきた。工場での生産活動が停止したり、農作業が停滞したり、輸送船舶の着岸が遅れたりして、サプライチェーンが途切れてきたようだ。生産工程を分割して貿易を活性化させてきたことが裏目に出たところがある。
コロナ危機に最初に大胆に対応した国際経済機関は、国際通貨基金(IMF)だといえそうである。2021年8月に特別引出権(SDR)の史上最大規模の一般配布(6,500億ドル相当、約4,560億SDR)を実施していた。SDRは(固定相場制時代の)1969年に、外貨準備を補完する「準備資産」として創設され、加盟国に適宜配布されてきた。各加盟国での使途についての聴取り調査の結果がエクセルシートにまとめられて、IMFのウェブサイトに掲載されている。使途として、国際準備資産のほか、政府財政の補填、コロナワクチンの代金、IMFほかに対するローンの返済があげられている。IMFは2022年3月には、ウクライナに、14億米ドル(10億590万SDR)の迅速金融手段(ラピッド・ファイナンシング・インストルメント、RFI)を提供している。(SDRの一般配布・迅速金融手段については、日本語の記事が利用可能である。)
国連は2022年3月に、食糧、エネルギー、金融に関する世界危機対応グループ(Global Crisis Response Group on Food, Energy, and Finance)を編成した。2つめの報告書「ウクライナでの戦争の世界的影響:数十億人が最悪の生計危機に直面する」(6月8日)は、グラフを多用して、戦争を速く終息させなければ、世界危機が深刻になってゆくことをわかりやすく伝えている。GDPがマイナス成長になっている国々が続出している。インフレ、食糧危機、エネルギー危機が進行している。国連貿易開発会議(UNCTAD)のウェブサイトに目立つように掲載されているのは、途上国が深刻な影響を受けているからであろう。ウクライナからの肥料や小麦の輸出もほぼ停止している。債務危機については、世界銀行グループなどで情報の収集と分析が進んでいると思われるのだが、一般には公表はされていないようである。ウクライナでは武器・弾薬があまり生産されていないことに、それらを提供してきた国々に苛立ちが見え始めているようだ。今や、世界を危機に陥れることこそが、プーチン氏の狙いなのだろうか。
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