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2022-06-14 00:00
(連載1)地政学的思考から見る中小諸国
倉西 雅子
政治学者
地政学的思考には、国境という概念が希薄で、むしろ、越境性にこそその特徴があります。国際社会を大国間のパワー・ゲームが展開されるフィールド(戦場)と見立てているのですから、国境線よりも実際の勢力圏が考慮されます。そして、こうした大国による勢力圏闘争の思考・行動様式は、中小諸国にとりましては殆ど’悪いこと尽くし’なのです。
第一に、中小諸国は、大国の勢力圏拡大政策の客体でしかありません。国民国家体系の下で、今日の国際社会は、民族自決(国民自治)、内政不干渉、並びに、主権平等を原則としています。ところが、全世界が大国のみがプレーヤーの資格を独占するゲーム・ボードもなりますと、中小諸国は、プレーヤーによって動かされる’コマ’でしかなくなります。当然に、これらの諸国の独立性や自立性は無視されがちです。この結果として、中小諸国は、自らの判断で対外政策を決定することが現実的でなくなり、自らが属する勢力圏の中心国に従属的な存在となります。NATOをはじめ、今日の軍事同盟の多くは、純粋に防衛を目的としているというよりも、大国による勢力圏形成の手段としても理解されましょう。外政に関する政策権限の移譲は、国家としての独立性を失うことをも意味しますので、大国の勢力圏に組み込まれた中小諸国は、外交的に、属国、あるいは、被保護国に近い立場に置かれることとなります。そしてそれは、外政のみならず、内政干渉への導火線ともなるのです。
第一に関連して第二に問題となるのは、中小諸国における民主主義の形骸化です。たとえ国民の参政権が保障され、普通選挙制度が整えられていたとしても、政府が政策決定の自立性(主権)を失い、大国の出先機関と化している状態では、国民は政策決定から除外された状態となります。与野党を問わず、何れの政治家も大国の代理人、あるいは、代弁者のように振る舞うとすれば、選挙にあって有権者がどの候補者に投票しようとも、民主的制度としての多党制も選挙制度も画餅に帰します。パワー・ゲームを背景とする選挙は、代理人選びに過ぎないか、あるいは、形を変えた大国間の争いの場となるのです。
第三に指摘し得る点は、第一の問題も第二の問題も、大国間の勢力争いを当然のものと見なす思考的な刷り込みによって正当化されてしまうことです。中小諸国は、自国が属する勢力圏の中心国が’敵対勢力’のメンバーと見なす国からの軍事的な脅威を前にしては、勢力圏に留まるしか選択肢がなくなります。この結果、自国が属する勢力圏の大国から主権を侵害されようが、内政干渉されようが、自国の防衛や安全保障のためならば、これらを受け入れざるを得なくなるのです。(つづく)
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