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2022-06-08 00:00
(連載1)効果が分からない出費が急増する日本の財政
中村 仁
元全国紙記者
どの程度の費用をかけ、どの程度の効果(成果)を得ようとするのか。この「費用対効果比」の原則を守らない企業は倒産、淘汰されます。それが国家予算・社会保障、安全保障・防衛、地球環境・脱炭素など、国家や社会全体の問題になると、「費用対効果比」の原則が黙殺される時代です。必要な金額(コスト)だけが算出され、財源をどう調達するのか、どのような効果(成果)を生んでコストが回収されるのか考えなくなっています。「必要なカネは惜しまずに出す」という原則が多くの国で大手を振っています。日本が最もそれがひどい国なのです。
日本は危機感が乏しく、財政状態は主要国で最悪なのに、安倍元首相は「国債は国の子会社の日銀が引き受けるから心配はない」と連呼しています。国家が消えることはないとしても、持続可能性を考えたいのです。本質的な問題は、効果が不透明な出費が安易に増えていく「高コスト社会」になってしまったということです。「高コスト」に見合う経済成長は難しく、経済成長率は低下する。ますますコストの回収が難しくなる。「費用対効果」のタガがはずれ、それを考えなくなりました。
まず国防予算です。ロシアのウクライナ侵略を受け、ドイツはNATO(北太平洋条約機構)が目標とするGDP2%に倍増するために、14兆円の特別資金を拠出する法案を可決しました。日本も同2%(自民党案)に倍増の考えです。防衛力の増強のためのコストが各国経済を苦しめます。米国は兵器、武器を海外に売れるからまだいい。健全財政だったドイツもまだいい。ひどいのは、アベノミクスと称して、平時なのにあまりにも長期間、巨額の国債増発を続け、残高がGDPの2倍以上になってしまった日本です。
日本は5年間で防衛予算を倍増し、単年度10兆円にする。国際的な対露包囲網の一環ですし、日本にとっては対中、対北朝鮮対策でもありますから、回避できるカネではありません。回避できないとしても、「必要なカネは出す」が大手を振って、財源論をまともに議論することはありせん。防衛力を増強しても、非常事態に備えた地下シェルターもないような日本です。北朝鮮が5日、実験した弾道ミサイルで襲撃されたらどうなるか。大深度の地下鉄の駅構内に退避できたとしても、作戦司令機能を移せる用意はしていません。(つづく)
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