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2022-05-14 00:00
(連載2)日本政府の予備費とウクライナ支援
倉西 雅子
政治学者
同装備品の提供については、「防衛装備移転三原則」に定めた禁止対象とはならないとしながらも、その後も、防護マスクや監視用ドローンの提供など、支援対象が拡大しているのです。こうした支援に要する予算は、上記の人道支援とは別途に予備費、あるいは、防衛費から支出しているものと推測され、ここにも、国会のみならず、国民的議論も見当たらないのです。
アメリカにおける「武器貸与法」の成立は、第二次世界大戦時以来とされており、日本国にとりましても無関心ではいられない側面があります。先の大戦にあっては、同法は、1941年12月8日の日本軍による真珠湾攻撃、並びに、それに連鎖したナチス・ドイツからの宣戦布告に凡そ9か月も先立った、同年3月11日に成立しているからです。同法は、公式の開戦、すなわち、第二次世界大戦へのアメリカの参戦の一里塚となったという意味において、いわば、連合国対枢軸国という同世界大戦の対立構図を決定づけた重要な法律であったとも言えましょう。
こうしたアメリカの「武器貸与法」の歴史を振り返りますと、政府の閣議決定のみによるウクライナ支援については、それが日本国の参戦という事態にも至りかねないが故に、不安が過ります。当時のアメリカと同様に、今日の日本国は、紛争の直接的な当事国ではありません。しかしながら、攻撃兵器ではないにせよ、ウクライナに対して軍用品を提供していますので、ロシアから一方的に敵国認定され、「軍事作戦」の対象とされてしまう可能性はゼロではないのです。
日本国が戦争の当事国となる可能性がある以上、ウクライナ支援については、民主的な手続きに従い、国会、並びに、国民的な議論は不可欠なように思えます。少なくとも、予備費を伴う閣議決定のみによる支援決定は議会制民主主義の迂回ルートともなりかねず、日本国民の多くも危惧することでしょう。中国の軍事的脅威が迫る中、ロシアとの戦争に国力を消耗することが正しい選択なのか、ウクライナのために日本国民が犠牲となることを甘受するのか、他に手段はないのか、などなど、議論となれば、様々な問題提起や提案があるはずです。第三次世界大戦の回避も重大なる人類の課題なのですから、直接的なウクライナへの支援にこだわらず、ウクライナ危機を終息へと向かわせるために知恵を絞るべきではないでしょうか。日本国政府の深慮なき支援決定が、日本国民の生命を危機に晒すとしますと、日本国政府の責任は重大でないかと思うのです。(おわり)
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