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2022-04-30 00:00
(連載2)見通しがつかなくなるウクライナ情勢
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
かつて、中国の要人と話をした。ちょうど、中国がPM2.5や黄砂で北京に住めなくなるほどの空気の悪化で健康被害が懸念され、新鮮な「空気の缶詰」が売られて、話題になったころの話である。筆者は「そんなに北京の空気が悪いのであれば、台北に首都を移してはいかがか。廻りが海で空気は良いが」と言ってみた。中国高官の顔は、みるみる困った顔になるので、追い打ちのように「一つの中国なんだろ」と念を押したら「あれは政治上の問題で実質とは異なるから無理だ」という。「では、何故無理なことを主張するのか」ということを言うと「それが政治なんだ」と返してきた。いずれにせよ「一つの中国」と主張しながら一つの中国ではないという現実を最も強く自覚しているのが中国共産党の人々なのである。
話を戻すと、今回ロシアはウクライナ東部のドンバス地方の二つの共和国の独立を認め、その保護と集団的自衛権の行使ということで軍隊を派遣している。もちろんそこでとどまれば、国際法上の侵略とは認めづらく欧米も動かなかった可能性が高いが、キエフまで攻め込んでは、言い訳のしようがない国際法違反であり、当然にロシアにその責を追わせるべく国際社会は動かざるをえない。
そのようなロシアを中国は支持しているのは興味深いことである。つまり「ある地域の独立を認め、それを保護するために軍を派遣することは、問題がない」という立場をとっているからである。地理をウクライナから極東に移す。台湾が独立を宣言し、アメリカがその独立を承認し、アメリカ軍が台湾に軍を派遣した場合、中国はそれを理屈では止められないということになる。中国は、ロシアへの支援などを行えば、ロシアと同じ論理で、欧米各国が台湾に上陸し軍を派遣することを止められなくなるのである。
中国の呉謙国防部長(国防相)も15日に「米国は台湾独立を支持しないと約束する一方で、台湾独立の分裂勢力に重大な誤ったシグナルを送っている。甚だしい虚偽であり、信義のかけらもない」と米議員団の訪台を非難している。中国はこのように「アメリカが過去に約束した」ということを中心に論理を立てざるを得なくなっているということになる。逆に言えば、約束していない国、例えばイギリスやフランス、日本などは軍隊や自衛隊を台湾に上陸させて支援することを中国は論理的には否定できないのである。
アメリカは、この一面の話だけでなく様々な分野でロシアや中国が自縄自縛になるように、手を打ってきている。このようにして、徐々に二つの陣営になっていくのであろうか。和平交渉が遅々として進まないままに、ロシアの軍艦の沈没や民間人の虐殺、マリウポリという独立共和国に含まれない都市の占領などが起き、ウクライナ戦争は和平の道が遠くなっている。これからも解決に向かうというよりは様々な問題が生じてくるだろう。(おわり)
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