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2022-04-28 00:00
(連載1)見通しがつかなくなるウクライナ情勢
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
ロシアがウクライナに侵攻しているが、この問題に対してアメリカは一定の距離を取ることに腐心している。ウクライナのために血を流すことを徹底的に避けるさまに、多くの国々が「アメリカは何もしてくれない」のではないかとアメリカへの見方を変えつつある。実際、国連総会におけるロシアへの非難決議には140を超える国が賛成したものの、人権委員会からの除名する頃には90弱の国しかしなくなった。50を超える国が棄権に回り、反対も増えた。それだけ時間がたてば、アメリカは何もしないから、ロシアの方を見たリスクヘッジを優先したくなってくるのである。
ウクライナの将校が、2月の侵攻当初に述べた話を思い出す。「この戦争は民主主義陣営が、全体主義陣営に挑戦されているということだ。現在NATOに参加していない国だから助けることができないと言うのであれば、今後NATOや民主主義陣営に加わろうという国はなくなるであろう。ロシアの侵攻に対して、NATOがウクライナに介入せず、ウクライナが惨敗した場合、ロシアや中国に頼る国が増え、民主主義陣営全体にとっての敗北となるだろう」という言葉だ。非常に印象深い。今回のウクライナ侵攻は、ウクライナだけの問題ではない。現にロシアの現地報道では、4月に入ってから「ウクライナ侵攻」とか「ドンバス地方の独立(または自衛)戦争」という言い方はされなくなり、ときに「第三次世界大戦」というような言い方に変わっている。ウクライナが敵だというスケールにとどまらず、NATOやアメリカ、イギリスが敵であるというふうに対象が広がったものとロシアは認識しており、対称的に中国を味方のように好意的に報道するようになっている。そして、国連の決議以降も、徐々にロシアによる多数派工作も行われ、孤立を深めているという西側の印象とは裏腹に必ずしもロシアは国際的に行き詰まってはいない。
さて、イギリスは特殊部隊をウクライナ国内に入れて、ウクライナを人的にも支援している。もちろん、NATOとして、正式に派兵しているわけではないが、ウクライナ軍が戦線を維持するための裏庭からの支援ということになる。他方、アメリカは湾岸戦争の時は日本に対して「Show the flag」といったにもかかわらず、今回は武器の供与のみで表立った軍事オプションは選んでいない。
そのアメリカが関心を高めているのが「台湾の保護」である。アメリカは当初から「ロシアがウクライナに侵攻した時は、中国がそれに呼応して台湾に侵攻する」ことを警戒していた。ロシアにとっては元旧ソ連領に対する鎮撫という認識でしかなく、戦争という言葉は使わない。「旧ソ連国内における治安維持軍の派遣」くらいにしか思っていないということになろう。それに対して、中国は、既に国際的にも「一つの中国」という主張を多くの国から認められている(「認める」の意味合いは国により様々だが)のであるから、台湾に進攻をしたとしても、それは「同じ一つの中国における国家分離を目指す独立派に対する治安維持出動」でしかなく「内政問題」に他国が介入することは認められないという主張をしている。(つづく)
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