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2022-04-21 00:00
(連載1)戦争とその果実
岡本 裕明
海外事業経営者
近代日本史に於いて日露戦争の勝利は極めて大きな影響を与えました。幕末に開国を通じて国際社会との関係を再開し始めてから着実に階段を登り、強敵ロシアを倒したことで世界に一目を置かれたと日本国民は自信を持ちました。この自信はその後の日本を間違った方向に走らせた主たる原因だとみる専門家は多く、私もそう思っています。戦後首相となった幣原喜重郎の自叙伝には日露戦争の勝利から日本は変わったということを明言していますし、司馬遼太郎も全く同様の考え方で「坂の上の雲」から先は下るしかないという意味で歴史小説を書きませんでした。
ではなぜ日露戦争が日本を変えたのか、2つポイントがあると思います。一つは強敵ロシアを駆逐し、アジアで唯一の強大な国家になりえたと国民が勘違いしたこと、もう一つは講和条約の内容が国民期待を大いに裏切ったからであります。特に賠償ゼロだったのは交渉当事者の小村寿太郎の思いとは別に、国民を再度奮い立たせたわけです。
歴史をさかのぼればモンゴル帝国やオスマントルコなど圧倒的領土を戦勝品として勝ち得た時代もありましたが、時代の変遷とともに戦争にはその実施理由が領土拡大から人種間対立、宗教対立といった特定の理由が主因になることも増えてきました。また、第二次世界大戦後は拡大する共産主義というイデオロギーが主因となり、国家の枠組みを超えたテロも横行しました。現代における国家間闘争は権威主義対民主主義といった取り組み方に代わっています。
戦争をするのは非常にコストがかかり、国家の疲弊は急速に進みます。また、以前のような情報統制は取りにくく、SNSの時代となれば国の司令塔が戦意を見せても兵隊や国民が必ずしも意図した形で動きません。アメリカなどは戦後、しばしばその罠にかかっているとみてよく、朝鮮戦争で苦労し、ベトナム戦争は泥沼化の上に国内に反戦運動が拡大、イラクでは戦果への疑問がつき、アフガンで底なし沼となりました。ちなみにアフガンでは旧ソ連もそれで泥沼化し、ソ連崩壊の一因になったとされます。(つづく)
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