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2022-04-20 00:00
(連載2)フランス大統領選挙に見える人類の共通課題
倉西 雅子
政治学者
フランスは、第一次世界大戦にあっては国土が荒廃し、第二次世界大戦にあってはナチス・ドイツの占領下に置かれています。歴史的には戦争忌避の傾向にありますが、この国民の意識が表面化してきたことが、現下の支持率におけるマクロン大統領とルペン氏との拮抗状態をもたらしているのかもしれません。しかも、今般の戦争は、先の大戦とは違い、自国に外国の軍隊が進軍・進駐してきているわけでもありません。事態の一層の悪化により、もしNATOの集団的自衛権が発動されますと、当然にフランスも無傷ではいられず、フランス軍における人的被害や莫大な戦費の負担も予測されます。最悪の場合には、双方による核攻撃の応酬となるかもしれません。
こうしたフランスの現状は、全ての諸国が直面している問題の輪郭を浮かび上がらせています。例えば、ルペン氏によるNATO離脱政策は、一見、フランスの安全保障を損なうように見えます。しかしながら、フランスが国連安保理の常任理事国であり、かつ、核保有国である点を考慮しますと、同政策は、必ずしも非現実的でリスキーなものとは言えないのかもしれません。否、核武装という前提条件があってこそ、独自路線の追求が可能となっているとも言えましょう。核保有が焦点であることは、実際に、フィンランドやスウェーデンは、’核の傘’を求めてNATO加盟を目指している点からも窺えます。核保有、国家の自立性、そして、安全保障の密接な関係は、何れの国にとりましても考えるべき問題です。
また、マクロン大統領は、この場に至り、ブチャ虐殺事件についてジェノサイドの認定を否定する発言を行っています。同発言に対しては非難の声が寄せられたのですが、マクロン大統領は、「ジェノサイドを行ったと非難すれば戦争が拡大する恐れがあるとして、この言葉の使用を避けている」と述べた上で、「ジェノサイドが起きたとみなす国には、国際法にのっとって介入する義務がある。それは人々が望んでいることなのだろうか。私はそうは思わない」と釈明しています。一連の発言は、戦争忌避に傾くフランス世論の風向きを読もうとした結果なのかもしれませんが、ここにも、国際法秩序の維持と第三次世界大戦の回避という、全ての国が果たすべき二つの課題の間に横たわる深刻なジレンマを見出すことができます。
何れの問題も、フランスのみが抱える問題ではありません。フランス大統領選挙の決選投票日は今月24日に迫っていますが、その行方には、否が応でも無関心ではいられなくなるのです。(おわり)
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