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2022-04-19 00:00
(連載1)フランス大統領選挙に見える人類の共通課題
倉西 雅子
政治学者
先日フランスで実施された大統領選挙では、過半数を超える票を獲得した候補者はおらず、現職のマクロン大統領と国民連合のルペン氏による決選投票に持ち込まれることとなりました。両者の主張は見事なまでに正反対なのですが、特に関心を集めているのは、ウクライナ危機の最中にあっての安全保障政策の基本方針です。親NATO政策を推進してきたマクロン大統領に対して、ルペン候補は、NATOの軍事機構からの脱退を主張しているのですから、同大統領選挙の結果は、まさにフランスという国の運命を決することとなりましょう。
NATOの軍事機構からの脱退はルペン氏が初めて言い出したわけではなく、1966年にシャルル・ド・ゴール大統領が脱退を宣言して以来、アメリカとの間に一線を画し、フリーハンドを確保しようとする独自路線は、暫くの間、フランスの安全保障面における伝統ともなってきました。フランスがNATOの軍事機構に復帰するのは、2009年、即ち、サルコジ大統領の時代のことです。この点からしますと、ルペン氏の主張は必ずしも過激でも突飛でもなく、むしろ、フランス保守の伝統的な路線への回帰とも言えましょう。
しかしながら、今般のルペン氏の主張は、ウクライナ危機を背景としているだけに、これまでとは違った切実な意味を持つように思えます。何故ならば、NATOの軍事機構からの脱退とは、即ち、フランスの戦争回避を意味するからです。北大西洋条約の第5条には集団的自衛権の行使に関する規定がありますので、仮に、ウクライナ危機がNATOを巻き込む欧州大戦、あるいは、第三次世界大戦へと発展した場合、フランスには参戦義務が生じてしまうのです。ルペン氏の訴えは、フランス国民の耳には、フランス不参戦の公約に聞こえていることでしょう。
支持率の動向を見ますと、ウクライナ危機は、マクロン大統領への追い風となってきたようです。同危機が発生した当初、マクロン大統領は、’国民を率いる力強いリーダー’を演出したため、黄色いベスト運動などで低迷していた支持率が俄かに上昇に転じています。決選投票まで残ったのも、あるいはウクライナ危機の’効用’であったかもしれません。ところが、同危機が混迷を深め、第三次世界大戦への懸念も指摘されるに及ぶと、さしもの’マクロン・フィーバー’も陰りを見せるようになるのです。(つづく)
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