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2022-04-12 00:00
(連載1)バイデンのウクライナ政策は成功するのか
岡本 裕明
海外事業経営者
ウクライナ問題に対してバイデン大統領が同盟国と共にロシアへの厳しい経済制裁を科すことでロシアを締め上げています。また、EUがウクライナの民間人遺体発見を受けて制裁強化を検討すると報じられています。一方、最近チラチラ見られるのが、厳しい経済制裁は果たして本当に正しい政策なのだろうか、という声です。この意見はロシアをどの観点から見るのかによって評価は変わってくるでしょう。対ロシア政府か、ロシア全国民向けか、欧米目線か、であります。
対ロシア政府に的を絞った場合、例えば政権の責任者個人の対外金融資産の凍結は意味があります。しかし、以前香港問題に絡み、アメリカが中国高官にそれを科したものの本人が「対外資産なんて一つもないから何の意味もない」と発言していたのも印象的でした。では、より汎用性の高い経済制裁で一般市民にまで影響が及ぶ締め上げが良いのか、と言えばこれも一長一短です。必ずしも政権に賛同していない人までも巻き込む短所がある一方、国内世論に反戦や政府批判を醸成させ、ある時期に政府転覆を図りやすくする土台作りになるという期待感はあるでしょう。しかし、経済制裁の結果、イランにしろ、北朝鮮にしろ、アメリカへの反発がより強くなったのが実態です。
最後に欧米目線ですが、これは制裁万歳に近いのですが、私はここにも大きな落とし穴があるとみています。日本の戦国時代、戦には一定の戦い方がありました。それは相手が遁走するルートを必ず残しておくことです。当時の戦いは農民に突然、槍を持たせるぐらいの急造型の戦力展開も多く、敵を見ただけで逃げ帰るという話も小説ではよく出てきます。戦に燃え、刀を振り回し、先陣を切って敵地に乗り込むというのは全体の中ではごく一部の武勇伝で実際には2:6:2の原理が働いていたのではないか、と思います。つまり、血気盛んに前に向かう人が2割、前に続いてフォローする戦力が6割、そしていやいやでチャンスがあれば逃げようと思っている人が2割です。今の欧米のロシア包囲網はロシアの逃げ道を少しずつ絞り上げていくスタイルで四方八方塞がれつつあるように見えます。一般的にはロシアは逃げ道を必死で探すでしょう。現代社会では逃げ道を完全にふさぐのはほとんど無理ではないかと思います。ロシアとしては今後、国家運営をするのに①戦局の支配、②国内世論のコントロール、③経済的安定の維持に注力するとみています。その中で国内世論と経済的安定については、ある意味同根に近いものがあり、例えば食糧不足となれば大きな反政府体制が生まれるでしょう。そうならないために経済をとにかく維持するのが重要になります。
さて、昨日も申しあげたようにアメリカは否が応でも利上げを推進するため、一部の新興国の経済的危機感がより高まってくるのは目に見えています。そうなると新興国も背に腹は代えられないとなります。私はロシアには個別のディールが相当押し寄せるとみています。(つづく)
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