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2007-09-07 00:00
長崎で話したこと 軍縮・不拡散・軍備管理
伊奈久喜
新聞記者
8月31日に長崎でフォード米軍縮代表ら4人の出席する核軍縮関係のシンポジウムに参加した。被爆地ナガサキでの議論であり、フォード氏には緊張も見られたが、聴衆の質問も専門的で、いわゆる平和教育のたまものと感じた。筆者が話したのは、核不拡散条約(NPT)の三本柱の軍縮、不拡散、原子力平和利用について、日本が置かれた状況で考え直す試みだった。NPTの文脈で語られる軍縮は普通は核保有国の軍縮である。しかしこの言葉は冷戦時代、ソ連の平和攻勢の影響で一種のイデオロギー色を持ち、軍備管理が多用されるようになった。
2つの言葉を比べれば、軍備管理の方が科学的な響きを持つ。例えばA、Bの2つの陣営が均衡した軍事力で対峙している場合、Aが一方的に軍縮をすれば、それはBが軍拡をしたのと同じで、かえって不安定になる。軍備管理はそれを避け、軍備を減らすにせよ、増やすにせよ、常に安定を求める含意がある。それゆえ技術的領域に入り、話は難しくなる。
一方、不拡散は非保有国への核の拡散を防ぐ作業であり、これも技術論になりやすい。例えば、北朝鮮の核も、米国の本音はこれがゼロになれば、それに越したことはないが、それがテロリストにわたるのを防ぐだけでも、米国の安全にとっては意味のある成果となる。軍備が管理されていればよいとする発想である。日本は北朝鮮と地理的に近いから、不拡散では安心できない。ゼロにしてもらわねば、と考える。
ヒル氏に対する日本の不満の最大の理由は、ここにあるのだろう。軍備管理の発想でこの問題を考えれば、北朝鮮は米の核も管理したいと考え、少なくとも削減を求める。米はそれに応じる考えはないから、北の核をせめて封印、さらに削減してくれれば、米の核を減らすかわりに何らかのご褒美をあげようと提案する。したがって北の核実験という悪行に報酬を与える結果になる。現在の米朝交渉は、まさしくこうした構図である。しかし、米国が北朝鮮からの核の拡散を防ぎたいために悪行に報酬を与えれば、それはどこかで核を持とうとする国を勇気づける。グローバルに考えれば、核の拡散を誘発する結果になりかねない。目の前の交渉を成功させることに夢中になっている軍備管理交渉者が陥るわなであり、ジレンマである。
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