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2022-04-06 00:00
(連載2)日銀は利上げで円安に歯止めかけよ
中村 仁
元全国紙記者
物価上昇には、コストプッシュ型と好景気型(需要増による物価上昇=デマンドプル型)があります。前者は「悪いインフレ」、後者は「いいインフレ」と言われます。黒田氏は異次元緩和政策を開始した当初、この問題にまったく言及していません。黒田氏が拠り所とするマネタリズム(貨幣数量説)では、「通貨供給量の変動が物価水準を決める」としているからです。それが今回、明瞭に「コストプッシュ型の物価上昇は好ましくない」と説明しました。今頃になって、どういうことでしょうか。
ゼロ金利、洪水のような通貨供給増で円安がさらに進み、円の実力は50年ぶりの低水準に落下し、それが資源を含む輸入価格を上昇させています。アベノミクス前の1㌦=75円(11年10月)から急降下し、今日4月5日現在では122円です。ある程度の円高を維持していれば、輸入インフレをこれほど懸念する必要はなかった。その意味でも、今後は金利引き上げを目指すというべき時です。黒田氏は「円安が経済・物価にプラスになる基本的な構図は変わっていない」と、これも断言しました。主要国が自国通貨高を目指している中で、円安歓迎というのは、これも真逆の通貨政策です。企業の海外移転、直接投資が進み、円安より円高メリットのほうが大きくなっている。円安は日本の安売りと同じことです。
アベノミクスはデフレ脱却が当初の目的であったのに、次第に円安誘導、株高誘導、赤字国債の増発誘導に転換していきました。金利のかからないゼロ金利下で、国債増発に歯止めがかからなくなった。金利機能が働かず、ゾンビ企業(死に体企業)が延命を続け、産業の新陳代謝が進まず、低成長の原因になる。異次元緩和開始の直後から、「日銀に出口なし」(日銀ウオチャーの加藤出著、朝日新書)との批判が聞かれました。いったん、この道に迷い込んでしまうと、抜け出すに抜け出せない。米国はできるだけ短期で金融政策から転換しようとしているのに、日本はもう10年近く続け、まだ向きを変えようとしない。
世界最大の財政赤字(GDP比率)の放漫財政体質から容易に転換できない。金融緩和の終了過程では、崩れ始めた株高にさらに懸念が生じる。だから政府、日銀は異次元緩和から足を抜けない。そうは言えないから、「コストプッシュ型の物価上昇、円安メリット、為替政策は財務省の権限」(総裁会見から)などど苦し紛れの説明に追い込まれているのです。(おわり)
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