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2022-03-31 00:00
(連載1)侵略を予防する仕組みを考える
倉西 雅子
政治学者
3日23日、日本国では、衆議院第一議員会館の国際会議室に設置されたスクリーン上に映し出されたゼレンスキー大統領の演説が全国に向けて放映されました。注目されていた演説内容は、日本国に対する謝意と対ロ経済制裁の継続を求めるといった比較的穏当なものであり、‘安全運転’に徹しようとした同大統領の姿勢が伺えます。日本国の政界並びに世論を徒に刺激しないための配慮なのでしょうが、もう一つ、注目すべき発言があったとすれば、それは、日本国に対して‘侵略の予防ツール’の考案を求めたことかもしれません。ゼレンスキー大統領は、同ツールの欠如が、今般の’侵略’をもたらしているとみなしているからです。’侵略の予防的ツール’には、凡そ力(軍事力)、合意(外交)、法(司法)の三つの側面からアプローチする必要がありそうです。
第1のアプローチは、力の均衡を利用するものです。ウクライナを含む全ての諸国が核兵器を保有し、国の規模にかかわらず、相互牽制が成立しているという状況であれば、抑止力という予防効果が期待されます。この状態であれば、ロシアもまたウクライナから核による報復を受ける可能性がありますので、100%とまでは言わないまでも、迂闊にウクライナとの国境線を越えて軍隊を進めることには躊躇することとなりましょう。ブタペスト覚書に従ってウクライナが核を放棄しなければ、今般の危機は防止できたとする説は、こうした核の相互抑止の考え方に基づいています。なお、防御面からすれば、全ての諸国が完璧なる高性能のミサイル防衛システムを導入するという方法もありますが、軍隊による侵攻を防ぐことはできませんし、今日の技術レベル、並びに、コスト面からしますと、同方法のハードルは相当に高い。
それでは、ロシアによる’侵略’は、両国間の合意によって防ぐことができたのでしょうか。合意による解決とは、主として当事国政府双方の外交交渉によるものです。もっとも、今般のウクライナ危機のケースでは、ロシア側にも口実が存在したことにおいて状況は複雑です。ロシア側は、これらの民族主義組織によるロシア人に対するジェノサイドを阻止するために、緊急措置としての軍事介入が必要であったとアピールしているからです。
ロシアが主張する虐殺が実際にあればウクライナ政府が黙認していたことになりますので、ロシア政府が急遽ウクライナ政府に対して協議を申し入れたとしても、即時には虐殺を止めることはできないことでしょう。一方、ロシア人虐殺が、ロシア、あるいは、何らかの組織による事実無根の’でっち上げ’であった場合にも、そもそもの目的が軍事侵攻の口実造りにありますので、この場合にも、話し合いによる侵略の事前阻止は望めません。(つづく)
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